時系列順[114件](2ページ目)

原題:Overdrive
94分

 高級クラシックカーを盗む兄弟が繰り広げるアクション物。彼らがやっている行為は強盗でしかないが、意外とそれなりに体術にも優れていたり、荒っぽいだけかと思いきや手口が鮮やかだったりと感心しそうになる。ただのクライムアクションかと思えば伏線もあり、そのままぼんやり観ていたら思いがけない展開もあるかもしれない。モチーフがモチーフなだけに作中でも様々なクラシックカーが登場する。車好きでアクションも好きな人は一度観ておこう。

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原題:Click
107分

 多くの人は楽を望み、時には思い悩み後悔する。そんな人としての良い面から悪い面までうまく表現したのがこの作品だろう。主人公が手にするリモコンは時間を早めたり止めたりできる。しかし過去を振り返ることはできるが、時間を巻き戻して選択をやり直すことだけはできない。それと返品ができない。これだけならそう苦労しないようにも見えるのだが、二つの欠点が主人公を苦しめていく。終盤に掛けては辛い展開ばかりかもしれないが、コメディ要素のおかげで最後まで観ていられるだろう。もしも昨日が選べたら、君はリモコンを使う?

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原題:곤지암
94分

 曰く付きの精神病院跡地で生配信をして視聴者数を稼ごう! という現代ならではのストーリー。もちろん彼らは怪奇現象に襲われる。怖いか怖くないかと言われたら確かに怖い。しかし残念ながらどれもこれも予定調和のままで、よく言えば王道的な展開。悪く言えばありきたりな展開が続く。せっかくのPOV形式も生配信というスタイルも味付け程度にしかなっておらず、色々と勿体ない。展開としてのホラー要素は物足りないが、SEや視覚的なホラー要素は強い。

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原題:The Commuter
105分

 いつも通りの日常を送り、いつも通りの電車に乗る。そんな日々が急に終わりきな臭い出来事に巻き込まれてしまう。主演がリーアム・ニーソンということで評価は甘め。そもそもよほどのことがなければ名作か佳作。会社をクビになってから大金が貰えるとなれば、主人公のような行動をとってしまうのもおかしくはない。誰が重要な人物なのか、という推理要素は少しあるもののそこまで難しくない。要注意人物とミスリードさせたい人物はさらに分かりやすく、やっぱり売りはアクション。しかしアクションは少なめで、やや消化不良か。推理要素とアクションが欲しい人の欲求には応えてくれるだろう。

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原題:Shutter Island
138分

 連邦保安官の主人公はある人物を探しており、別の名目で島を訪れる。なにやら色々と怪しい場所で妙な者達と邂逅しながらもどうにか捜査を進めるのだが……。捜査自体も裏の目的も同時に進行し、そこまで派手さはないものの次々と様々な出来事が起こる。中にもラストへと繋がる演出の数々はそれが何を表しているのかと考えさせられる。しかしその演出が過剰すぎるせいか、真実を理解しやすくもなっていた。それにこういった映画では付き物で、見た瞬間に何もかも理解してしまうようなコピーもご丁寧に添えられている。面白いが、色々と残念な印象ばかりが残ってしまう一作だった。

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114分

 ちょっとした切り傷や擦り傷程度であれば、大抵の人は軽く水洗いをして放置することも多い。しかし運が悪いと細菌に感染してしまう場合もある。身近にあって死亡率も高い破傷風。この感染症の恐怖を教えてくれるのがこの作品だ。映画を通して観れば、確かに恐ろしさも人間の弱さも描かれている。ところがホラー要素を重視しすぎたのか、色々と理不尽な(あるいはご都合主義とでもいうか)描写も見受けられる。ストレスによるパニックを表現するための発狂は問題ないが、破傷風の患者をあの病室に入れるのは意味が分からない。誰も破傷風について詳しくないという想定で撮られていれば、そういう時代だったのかもしれないとは理解できる。けれども作中で音と光に対する影響が語られている以上、納得できる者は居やしないだろう。驚くような展開はなく、先述した通りで粗もある。それでも視聴者を引き込む力はあり、機会があれば観て欲しい一本だ。

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原題:Die Hard
131分

 パーティーに参加する予定だった刑事が悲惨な目に遭うアクション映画。武器も揃えた犯罪者集団と刑事一人ではどう足掻いても勝てっこないが、不運にもその刑事は常識が通じない相手だった。うっかり危ない目にも遭うが、主人公は持ち前のセンスでどうにか切り抜ける。その姿は逞しく、あまりにも強い。後にシリーズ化されるだけあって一方的な強さを見せつけるだけではなく、意外にも丁寧な伏線が用意されている。アクション映画の面白さとストーリーの面白さがきっちり両立されていて、爽快感を味わいたい方には手放しでおすすめできるだろう。強いて言えば一部の方々は国民の命を守る意識が薄く、何の為に存在するのかと疑問が残る箇所もある。その辺りについては、爽快感からはほど遠いかもしれない。#[ダイ・ハードシリーズ]

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原題:Awakenings
121分

 いつも通りの日常が永遠に続くとは限らない。ふとした拍子に環境が変わることもあれば、自分自身が変化してしまうこともある。本作に登場するのは、病気によって日常が失われた患者と医者達だ。主人公はこれまで研究に没頭していた医者だったが、臨床医として勤務することになる。戸惑いながらも患者を診ている内に、研究熱心な性格からか特定の患者に共通した反応があることに気付く。様々な方法を実践し、実際に効果も出始める……。舞台やテーマからすれば退屈な展開が続きそうなものだが、主人公の静かな変化と患者の劇的な変化で飽きずに鑑賞できる。切らない(血の出ない)医療物を探している方がいれば、この作品をおすすめしたい。

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原題:The Last Emperor
163分

 清朝最後の皇帝、愛新覚羅溥儀がどんな生き方をしたのか。また、どう去って行ったのか。壮大な歴史を壮大なスケールで描いた歴史映画。とはいえ歴史をそのまま表現したノンフィクションではなく、映画としての魅力が増す為の創作が随所に練り込まれている。どこがどう脚色されているのかは歴史に明るくなければ分かりにくいだろう。しかし登場人物が終始英語を話しているというのはどうも違和感が強く、なんとも複雑な心境になってしまう。これといって派手などんでん返しや演出も少なく、ただただ壮大で偉大な世界観に圧倒される。どこがどう面白いと伝えるのは難しいが、もし誰かに勧めるとしたら「とにかく凄い」の一言に尽きる。

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原題:Mulholland Drive
145分

 殺されそうになった人物が幸いにも交通事故によって助かり、記憶喪失になりながらもなんとか生きながらえて新生活をスタートさせる。冒頭はこんな展開で、どうして殺されかけたのか? この鍵は何だ? と小さな謎が襲いかかる。しかしそれらは小さな謎どころではなく……。どう説明したら良いものか悩む上に、どう解釈したらいいのか正解が分からない作品でもある。夢と現実が入り乱れ、時系列までもがふらふらと彷徨っている構成となっており、見返してみても「多分こうじゃないかなあ?」と思うのが精一杯だろう。考察する趣味が無ければ駄作にもなり得るが、謎解きや女優同士のポルノシーンに興味のある方にはおすすめしたい。

戯言(ネタバレ含む)
 あれやこれやと考察しても記録すらしなければ、それはいつしか記憶の片隅からも消え去ってしまう。それはなんだか寂しく、勿体なくもあるので手短に個人的な追記を残しておく。

 この映画を語る記事を見ると、先述したように夢と現実がキーワードとして登場する。演出の方法からしても、それは間違いないのだろう。しかしそれでは面白くない。というよりも、何もかもを夢と決めつけてしまうのも悔しいのだ。 ジャケットからしてもベティあるいはダイアンが主人公で、彼女の夢と現実がこの物語なのだと言われている。だが、私はあえてカミーラの夢と現実こそがこの物語なのだと思いたい。

 時系列で言えば前半と後半は逆で、夢破れた生活を描いた現実と夢を叶えた世界。一人の田舎娘の哀しい人生を、彼女の視点で描ききったものとなる。そこまでは私も同意しているが、捻くれ者だから納得しない。「これはダイアンを死なせてしまったカミーラの懺悔なのだ!」と断言したい。まあ断言したいだけでこれが正解ですよと言い切るつもりもないのだけれど。

 こじつけではあるものの、そう断言したい理由はいくつかある。まず冒頭のベッド。ここでは誰も写らない。誰かが寝ているだけである。全てのシーンを見た上で改めて見ると、「これは夢の暗示だ。ここで眠っているのはダイアンだ」となる。しかし彼女だと確信を抱かせるだけのものはない(ダンスのシーンからは目を背けつつ……)。

 他にもとある人物とカミーラが唇を重ねるシーン。これは彼女がダイアンのような女性を好んでいるというヒントだと考える。それに死体を見て取り乱したシーンは、かつて愛していた女性の死体を目にしてしまったからこそのパニックだと判断したい。どうも訳が分からなくなってきたので、個人的な解釈に基づく展開を以下に記そう。

 カミーラがダイアンと出会う(その出会い自体は描かれていないものとする)。カミーラはダイアンのことを好んでいたが、本気では無かった。あろうことかカミーラはダイアンを置いて結婚を決意し、目の前で他の子と接吻をしてしまう。そのことにダイアンは酷く傷付き、どうせ結ばれないのならとカミーラの殺害を決意する。

 しかし殺害は失敗(冒頭の事故)してしまい、カミーラは生き延びる。カミーラは記憶を失ってしまったが、最愛の女性とそっくりなベティに惹かれる。彼女との蜜月を堪能しつつも自分の正体が気になり、二人は例の家へと忍び込む。そこはかつてカミーラがダイアンと共に過ごしていた家で、カミーラを殺してしまったと考えていたダイアンは自ら命を絶っていた。

 ダイアンの死体を見たカミーラは全てを思い出し、過去の自分がしでかした振る舞いがフラッシュバック(ダイアンの夢だとされている全てのシーン)する。何もかも思い出してしまったが故にカミーラの頭は後悔に嘖まれるようになり、毎夜悪夢に悩まされることとなる……。

 ……という展開だったらどうだろうか。「じゃあこのシーンは?」「この行動は何の意味があるの?」と疑問を抱く者も居るだろう。しかし口を噤むべきだろう。私は捻くれているだけであり、そこまで深く考察していない。こうだったら面白いかもしれない、という安直な発想のもとで生まれたのがこの解釈である。できれば与太話の一つとして楽しんで欲しい。畳む

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原題:The Shawshank Redemption
143分

 生きるとは何か。命とは何か。幸いにも現代の世の中では、あまり深く考えてこずとも人が人らしく生きる権利を持って生まれる機会が多い。漠然としたビジョンすらも無いまま、人生というものを享受している者が殆どだろう。この作品に出てくる彼らは罪を犯している。主人公にしたって、彼の妻からしたら何らかの不満があり、それは一つの罪であろう。しかし罪の重さを自覚した者達は、長い刑務所での生活によって変わる。ところが彼らは塀の中しか知らず、塀の外を知らない。これまでの常識が通用しない世界に出ても戸惑い、苦しんでしまう。それでもどうにか生きていく為に必要なもの――希望の大切さを学ばせてくれる。自分の人生に絶望している方や、今をなんとなく生きている方々に。人生を考えるきっかけとしておすすめしたい。

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原題:Brazil
142分

 一見少し物騒なだけの未来。しかしその世界は監視社会であり、もし何らかの違反行為をしようものなら捕まってしまう。それだけで済めばいいが、取り調べでうっかり殺されてしまうこともある。現代社会なら法廷で解決できそうなものだが、この世界ではそうもいかない。不都合なものを見てしまい、強く訴え出ようとすればやはり捕まる。しかし誰しもが監視しあっているような世界にも見えず、権力者が極端に優遇されているのを実感する程度である。本作の主人公は、そんな窮屈な世界で夢に見た女性と遭遇し、共に暴走する。終始やっていることはめちゃくちゃで不可解な上に所々ユーモアが挟まれる。しかしそれが独特な世界観に繋がっていた。もしその辺りの演出がなければ眠たいだけの凡作になっていただろう。どこかでありそうなリアリティと、浮世離れしたシュールレアリスム。一風変わった作品を探している方におすすめしたい。

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原題:Ascenseur pour l'échafaud
92分

 ある目的の為に準備をしてきた男が計画を実行し、成功する。しかしお粗末な後処理のせいで現場に戻ることとなり……。展開としてはよくあるサスペンスだが、事前準備に力を注いでいたくせにどうしてそれを忘れるのか? と首を傾げてしまうストーリーは賛否両論だろう。動転していると言えばそれまでだが、ある場所から出る為に試行錯誤する様もスマートには見えない。視点が変化しながら様々な姿が映し出される演出が目立ち、気付けば主役も代わっている。面白いのは確かだが、色々と理不尽で納得しにくい箇所はあった。悪くはないものの、サスペンスに完璧さを求める者には物足りない作品だろう。

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原題:Identity
90分

 死刑執行の前夜になっての再審議とモーテルでの殺人事件。物語は同時進行で進み、観客は二つの出来事の関連性を見出そうとするだろう。そして関連性を見つけた時、ふと勘違いに気付く。しかし勘違いはそれだけでは済まず……。この作品はサスペンスだが、単に犯人を当てるだけでは終わらない。モーテルに集まった人々の共通点とは何か。何故カウントダウンされていくのか。どうして鍵があるのか、誰なら出来るのか。整合性を意識しすぎず、どうやったらこうなるのか……と考えれば真相に気付けるかもしれない。二転三転と裏をかかれる構成は巧みで、最後のシーンは色々と考えさせられる。ガチガチのミステリーやサスペンスは好まず、普段はファンタジーやクライム映画を観るような方におすすめしたい。

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原題:Soylent Green
97分

 人口は増え続ける一方で食品は枯渇し、今まで一般的だった食品の価値が高騰した未来。職も安定せず、そのままでは死ぬしかないような人々も多い。しかし彼らには食べ物があった。ソイレント社が作る味気ない食材――ソイレントである。ソイレント・イエローにレッド。新しく作られたグリーンと種類もあり、原料もそれぞれ異なるがどれも美味しいという声はきかない。

 現代の人からすれば人らしからぬ生活を送る貧民達の姿が目立つが、富裕層は対照的に恵まれた生活を送る。ある高級住宅街にも他人が羨む日々を送る者が居た。その者は暗殺者に命を狙われるが抵抗もせず、死を受け入れる。彼はどうして抵抗しないのか。死を決意するほどの何を知ってしまったのか。物語は彼の死から大きく動き出すことになる。

 彼の死を担当した優秀な刑事ソーンが事件を調査するシーンが殆どであり、激しいアクション要素もそう多くない。どこか薄暗い空気のまま、じわじわと真相に近付いていく。どうしてその秘密を知った者は死を選ぶのか。何故他の人にまでその選択は伝染してしまうのか。その世界にあるものは何か。ソイレントとは何であるか。恐ろしい世界を観てみたい方におすすめしたい。

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原題:Exam
101分

 色々と謎が多い企業の就職試験会場には8人の男女が集まっていた。試験監督が口を開き、彼らは試験に備えて集中していくが……いざ試験用紙を捲るとそこには何も書かれていなかった。白紙の試験と制限時間。彼らは試験監督の言葉を振り返り、問題を見つけようとする。ルールは何か。ルールの真意とは。ある受験者がルールの意味を理解したところで物語は動き出す。

 限られた舞台、決まったシチュエーションでの映画はそれなりに存在する。棺桶に閉じ込められて土の中に埋められた男が主役の『リミット』や、電話ボックスを舞台に口先だけでなんとか事態を乗り越えようとする『フォーン・ブース』は個人的にも気に入っている。ただ本作の場合はそれらの作品とも違い、部屋を移動しない『キューブ 』といった方が分かりやすい。

 どうにかして試験に合格し、高額な報酬を手に入れたい。だからこそ仕方なく協力しあうのだが、採用予定の人数はすでに決まっている。お互いの本質を露わにしながらも目的の為に行動し、裏切る。彼らがどういう立場で問題が何なのかといった点は割と分かりやすいが、個性が絡み合って退屈させない作りになっている。人間ドラマファンのみならず、脱出ゲームやひらめきを重視するクイズ番組辺りが好きな方におすすめしたい。

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原題:The Blair Witch Project
81分

 今となってはそこまで珍しくもないモキュメンタリー・POVの大ヒット作。ドキュメンタリー映画を撮影しに、伝説の魔女がいるという森の中へ向かい、そのまま失踪してしまった学生たち。彼らのビデオ映像を編集し、そのまま映画化した――という内容になっている。正直に言ってしまうと企画や話題性ありきで、今見ると驚きはない作品だろう。

 学生という設定もあり、彼らのインタビュー映像やふざけている姿は洗練されていない。ひたすら他人のホームビデオを見せられているような気分にもなるが、その素人臭さがなければこの作品は成り立たない。もしこれが事実だとしたら、これには一体どんな理由があったのか……と考えるような、陰謀論や考察が好きな者には今でも面白い映画なのかもしれない。

 もし本作がヒットしていなければ、今頃はB級映画ファンがたまに思い出す程度の扱いだったかもしれない。ただ本作はヒットした。ヒットしてしまったおかげで記憶に残り、ヒットしてしまったせいで一定の評価も得てしまった。決して悪い映画ではないが眠気を誘い、ホラーを期待して肩透かしにもあう。話題作だからと期待せずに、軽い気持ちで観た方がいいだろう。

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原題: Stranger Than Fiction
112分

 どの作品にも欠かせない存在というものはある。誰もが魅了される愛しいヒロイン? 知恵と狡猾さで観客を苛立たせる憎たらしいライバル? 違う。彼らは存在しなくとも成立する。当たり前すぎて忘れてしまうが、作品に欠かせない存在といえば主人公である。主人公が存在しなければ作品には何の展開もない。ただ地球を写しているだけの映像であれば、主人公は地球そのものだろう。机の上にあるだけのボールペンですらも、そのものを捉えていれば主人公である。

 この作品における主人公はハロルド・クリック。規則正しい生活を送る一人の人物でしかない。彼はいつも通りに生活していたが、ある時からふと声が聞こえるようになる。その声が自分の行動を細かく描写することに気付き、彼はこの声の正体を突き止めようとするが……聞きたくも無かった言葉を聞いてしまい、自分の運命から逃れようと奔走する。

 私たちは意思を持ち、自身の選択によって行動するだろう。空腹だと思えば食事を……いや、あえて空腹のままでいるかもしれない。トイレに行きたくても我慢する人だっているだろう。誰がどう選択しようと、それは当人の自由である。勤務中に仕事をしなければ注意もされるだろうが、休暇中に遊んでいようが何も言われない。私たちは人生を送り、道を選び続けるのだ。

 だがもし、自分の行動が誰かの意思によって決められていたら。そう考えるとぞっとしてしまう。なんとなく選んだ珈琲も、誰かがその珈琲を飲むように仕向けたのかもしれない。自分の意思で諦めた道も、本当は諦めなくて良かったのかもしれない。そこに自分の意思はなく、誰かの筋書きで動かされているのだとしたら……そう思うと、何もかもが信じられなくなる。

 本作の主人公は声に気付き、自分の運命を知った。だからこそ自ら運命を切り開こうと今までに無い行動を取り始めた。ナレーションと主人公の行動。同じようなテイストのゲームに『The Stanley Parable』というものがある。こちらはナレーションと違う行動をとると天の声が牙を剥く。本作とは無関係だが、興味があれば是非遊んでみてほしい。

 この感想を読んでいる者も、恐らくは自分の意思で文章に目を通しているのだろう。けれどもそれを保証する者はおらず、確信を抱くのも難しい。今文章を認めている私自身ですら信用は出来ない。考えれば考えるほどに恐ろしくなる、主人公である自分自身の人生。果たしてその人生は誰が描くものなのか。決まり切った人生に疑問を抱いた時、この作品に触れてもらいたい。

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原題:Good Will Hunting
127分

 大抵の人は優れたものを欲しがる。それは外見であったり、誰もが舌を巻く頭脳であったり、誰からも愛される人柄であったりと様々なものがある。本作の主人公であるウィルは外見も頭脳も優れており、本気になれば大抵の夢を叶えられるだろう。しかし彼は定職にも就かずに清掃員として働き、端から見れば非常に勿体ない生き方をしていた。

 もちろん彼がそんな生き方を選んだのには理由があり、自身の考えから今の人生を歩んでいた。才能を活かさない日常を送り続けるつもりだったが、彼も好奇心には勝てなかった。ある日の清掃中につい数学の難問を解いてしまい、お節介な教授に目を付けられてしまうのだ。そのせいでウィルの人生まで少しずつ変化していくのだが、性格まではそうそう変えられない。

 厄介な理由からこじれてしまった性格で様々な人に迷惑を掛けながら、彼は心を開ける相手を見つける。決まった時間の限られたコミュニケーション。長い時間を掛けて積み上げられた高く堅牢な壁にも小さな穴が空き、その穴は少しずつ拡がっていく。その穴から光が差したその時、ウィルはようやく本当の自分を曝け出すことになるのだった……。

 頭の良い非行少年の成長記。本作を一言で表現するとしたらそんなところだろう。しかし丁寧に練られた脚本と憎い伏線は、たとえ分かっていたとしても涙を誘う。道を間違えた時に正す存在ではなく、道を照らしてくれる存在。それに心から成功を願ってくれる親友。人と共に生きる難しさや喜び。本作を観れば大切な人と生きる日々の美しさを知ることができるだろう。

705文字 編集

原題:The Taking of Deborah Logan
90分

 アルツハイマーの老婆を取材していると様々な恐怖に襲われる作品。老婆の演技やちょっとしたグロ表現はホラー映画としてはそれなりだが、恐怖心を煽る手法がベタな上に音やカメラの揺れといったものに頼りすぎている印象を受ける。ドキュメンタリーらしさとホラーらしさを追求しすぎたのか、結局これは何だったのかと首を傾げてしまう。ちょっとしたグロ要素やモキュメンタリーを求めていれば悪くないのかもしれないが、ターゲットがよく分からなかった。

266文字 編集

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説明

 洋画中心。最低でも週に一本はレビューするつもりで定期更新。※現在は創作や仕事に集中するため、ほぼ停止中。

 レビューを書き始める前に観た映画の一部リストはこちら。好みの参考にどうぞ。趣味が合う人は名作を、趣味が合わない人は迷作をチェックすると好きな映画が見つかるかもしれません。

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