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100分

 生殖機能を失った人類と、かつて労働力として産み出されるも人類とは離反して生活を送るようになったマリガン。未知のウイルスが蔓延した世界で人類はマリガンに希望を託すことになる。とはいえもはや完全に異なる生命体と社会が形成されており、上手く話が進むとも限らない。そこで調査員としてバートンが向かうことになったのだが、彼には特別な力も無く、前職もただのダンス講師で……。

 たまにCGアニメやクレイアニメといった少し毛並みの違う創作物に触れてみたくなることがある。ふとAmazonからのメルマガを見るとそこには本作の宣伝があり、ちょうど何か気分転換に観たいと思っていた私は再生ボタンをクリックしていた。その質感や表現は私の欲求を十分に満たすものであった。しかし物足りなかったのも事実である。

 本作の舞台は遠い未来で、人類はすっかり変わってしまっている。その姿は人類というよりもアンドロイドに近く、人類だったものが人類のような外見を保つために身なりを整え、人並みな生活を送っているとでも言った方がいいだろう。対して人工生命体であったマリガンの方がやや原始的ではあるものの、人らしいといえる。

 人類代表のバートンがマリガンとどう対立するのか、どうやって同じ道を歩んでいくのか――という展開はなく、うっかり記憶喪失になったバートンがマリガンに助けられるという内容になっていた。そこには人間らしさとはなにかというテーマが描かれているような気もする。ただ個人的に望んでいた展開ではなかったのが残念だった。

 主人公の設定も現時点ではあまり生かされておらず、物語の序章を終えたばかりという印象が強い。三部作の第一章と書かれていたのだが、本作に7年かけているらしい。果たして後何年待てば完結するのだろうか。使い回しに出来る資産が増えたとしても、撮影の手間を考えるとせいぜい1年か2年短縮できるだけなんじゃなかろうか。

 完結してからだと様々な伏線や設定の活用も見られるのかもしれない。だが現時点では雰囲気はいいが未完成な作品である。造形やスプラッターは好みだったが、そこまでの驚きはなかった。続編次第ではおすすめだと言える魅力もある。『カクレンボ』のような映画であり、『Cat Shit One』のようなエンタメ要素がもっと欲しかった。

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原題:Mark Felt: The Man Who Brought Down the White House
103分

 アメリカで起こった政治的な大スキャンダル、ウォーターゲート事件を題材にした映画。民主党本部での盗聴未遂。その犯人が大統領再選委員会の関係者というだけでも公にはしにくい内容だが、そこに数々の捜査妨害までが加わり、大物の内部告発者まで出てくる。結果的に大統領の辞任といった大きな影響も与えたもので、その展開自体は創作物以上の内容とも言えるだろう。

 さて肝心の映画としてはどうか。リーアム・ニーソンが主演だからと観てみたが、面白いが退屈だった。相反する言葉が並んでいるように見えるだろう。しかし他に表現のしようがないのである。知能犯が活躍する犯罪映画の面白さみたいなものはある。じわじわと追い詰めていく推理映画のような楽しみ方もできる。ただひたすらに静かで、落ち着いた雰囲気のまま終わってしまうのだ。

 登場人物が(やっている内容はともかくとして)いい大人ばかりで、表立って拳銃を打っ放したりすることもない。力で解決させることはできず、地道に証拠を集めたら記者を利用して現場で何が起こっているのかを世間に知らしめる。内容としてはその繰り返しで、眠くなるほど退屈ではないが物足りなさを感じる程度には退屈である。

 娯楽映画ではなく伝記映画なのだから、史実と異なる激しいアクションや衝撃的な展開なんてものを期待してはならない。だが同じくリーアム・ニーソンが主演だった『シンドラーのリスト』はもっと長尺で映画としても楽しめた。個性が不足していたのは仕方ないとしても、もっと見せ方で面白くできたんじゃないかと思ってしまう。面白いが退屈。やはりその一言に尽きる。

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原題:Day of the Dead
102分

 数少ない人類はゾンビだらけになってしまった世界で地下の施設に籠もって生きていた。生き残りの人類を捜したところで結果は奮わず、現れるのはゾンビばかり。疲れ切った状態でもまた別の仕事をさせられる上に失敗しては殺されかける。そんな極限状態ではまともな話し合いもできずに互いのストレスだけが増えていく。それでもローガン博士は意味があるのかもわからない研究を続け、サラは頭を抱えていた。

 唯一の女性で比較的まともなサラが振り回される描写が目立ち、ゾンビの脅威そのものは比較的抑えめなままストーリーは進む。とりあえず侵入さえ防いでいればなんとかなるゾンビよりも、互いに共同生活を営んでいる人間の方がよっぽど恐ろしいというのはなんとも皮肉な話だが、今の時代でもゾンビ物でそういう描写は多い。きっと人間こそがレジェンド級の化け物なのだろう。

 だが最初は敵ですらない印象を与えていたゾンビも、徐々にその優れた能力を発揮していく。博士の研究は狂っているようにも見えたが、その研究は実を結んでいたのだ。理性や自我を持たず、視界に入ったものを襲うだけと思われていたゾンビが徐々に学び、過去の記憶から行動する。それは信じられない結果であり、恐ろしく不気味なものでもあった。だからこそゾンビを、そんな研究を続ける博士までもを嫌悪する兵士が出てきてもおかしくないのだ。

 最初は思っていたよりもスプラッター要素が少なくて落胆していたが、ゾンビが暴れ出すとそんな気持ちもなくなった。生きたまま焼かれたり体を裂かれたりと血みどろのシーンには否が応でもテンションが上がる。もしこれが善人寄りの人物であれば嫌な気持ちにもなるのだが、酷い目に遭うのは酷い輩ばかりである。憎たらしい人物が苦しむ度についついゾンビの応援をしたくもなるというものだ。

 ただそんなやつらでも最低限の良心は残っているのか、もしくは兵士としての誇りかは分からないが、唯一の女性で顔立ちも整っているサラを襲わなかったという点については評価できる。それに個人的な好き嫌いで出てきた兵士を全員敵視していたが、とんでもなく酷い人物は一人しかいない。まあ彼がヘイトを集めすぎていた気はするが……ゾンビ三部作の中で一番好きなものはと聞かれたら、私は本作を挙げるだろう。

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原題:Night of the Living Dead
96分

 ある車は墓地へと向かっていた。自動車を走らせながら兄のジョニーは愚痴をこぼし、妹のバーバラはそんな兄に少しうんざりしていた。ジョニーは退屈だったのだろう。彼は花を添えるなり、少し離れたところにいた身なりの汚い男を見てバーバラに「襲ってくるぞ!」とからかい始めた。バーバラは兄の子供じみた失礼な言動を詫びようと男に近づいたのだが、その男は本当にバーバラを襲ってきたのだった。

 せいぜい不審者のような見た目の男に襲われる。ここまでは単なる性犯罪者か殺人鬼といったところだ。しかし彼はどうも正気ではなく、今でいうゾンビだった。他のゾンビはゾンビらしい……というとそれはそれでどうだか分からないが、見た目からして普通じゃないように感じられるものが多い。とはいえ夜中だと分かりにくく、会話ができるかどうかで判断するしかないだろう。

 ヒトの形をした化け物に襲われて逃げたバーバラは他人の家に避難するが、放心状態でまともに会話もできない。偶然出会ったベンは冷静に家を補強しつつもバーバラを気にかけるものの、いざ話し始めると今度はパニックに陥ってぶん殴られてしまう。冷静な男と真逆な女。そんな二人にまた別の人物が加わり、この事態に対処しようとあれやこれやと動き回るのが主軸となる。

 ホラーやパニック物ではありがちなトラブルも盛り込まれており、こいつさえいなければもっとスムーズにいくんじゃないかという展開もある。ほぼ一軒家でストーリーが進み、場所も殆ど変わらないのだが個々の衝突もあってか最後まで観ていられる。この辺りの構成や演出からはロメロが巨匠と呼ばれるだけのものは感じられるだろう。

 本作の次に公開されたゾンビ映画の『ゾンビ 』は既にレビューしているが、ゾンビらしさやゾンビっぽい見た目といったものを重視するのであれば、そちらを観た方がいいだろう。ただゾンビに襲われる恐怖感や無力感、それからオチまでを考慮すれば本作の方が面白い。今となっては色々と出来が悪く感じる部分もあるだろうが、王道のゾンビ映画らしさは堪能できるはずだ。

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原題:Winchester
99分

 ウィンチェスター社は銃を製造しており、その銃で大勢の人が命を失っている。ウィンチェスター婦人は霊媒師に話を聞き、怨霊の為に改築を行っていた。改築に改築を重ねるウィンチェスターハウスは継ぎ接ぎだらけの異質な屋敷として大きくなり、怨霊が増えるにつれて奇妙な現象の数まで増していく。だがそんな話を信じるわけもなく、そこに精神科医が送られるのであった……。

 どんな映画を観ても良いところと悪いところを考えて感想を書こうと心掛けている。しかし本作は難しかった。強いて言えば一見すると映像が綺麗。それくらいだ。ストーリーもあるが微妙だ。実在する呪われた屋敷が舞台で、その屋敷といえば改築を繰り返した迷路のような構造が魅力だろう。だがこの映画ではそんな描写はほぼ無く、展開に活かされることもなかった。

 てっきり隠し部屋や隠し通路を使って逃げたり、そこを危険人物が利用して危機を招いたりといったサスペンス寄りの恐怖を想像していたのだ。けれども蓋を開けてみれば中身は期待外れの凡作だった。ホラー要素も精神的に恐ろしいものではなく、急に悪霊が映り込んで驚かすというものばかり。この映画がウィンチェスターハウスである必要はあったのだろうか。

 ホラーは観客を驚かせるものであり説明不足でも許されるという風潮もある。だとしても本作は微妙で、終盤の描写もホラーとしての盛り上がりではなくアクション映画のそれであり、ホラー映画好きとしてもウィンチェスターハウスのファンとしても納得できないだろう。外観の描写もワンパターンで物足りず、誰におすすめしたらいいのかも分からない。他に娯楽がなければ観たらいい。

738文字 編集

原題:Bølgen
105分

 地質学者のクリスチャンは大手石油会社に引き抜かれ、今まで働いていた職場を辞めることとなっていた。しかし勤務最終日のデータがどうもおかしく、少し不安を覚えていた。そして迎えた引っ越しの当日。この日も妙な違和感があり、クリスチャンは岩盤や息子のゲーム画面を見て何かに気付く。慌ててフェリー行きの自動車をUターンさせると、クリスチャンは研究施設で働く仲間たちに岩盤の崩落を告げるのだった。

 ノルウェーは岩盤崩落が起きやすい地域で、本作は実際に起きた津波事故に基づいた映画でもあるらしく、災害の恐怖や迫力は確かに感じられる。天災に備えることができても、人はあまりにも無力だ。生き延びる者がいれば息絶える者もいる。最善策も無策も等しくふるいにかけられる。生死さえも運次第でしかないのである。

 主人公のクリスチャンは違和感を無視してすんなり引っ越してしまうこともできた。それでも彼は災害に備えて動き、大勢の命を救うべく働きかけた。もし彼がデータの異変を気にかけていなければ、もし自動車を降りて声を掛けなければ。強靱な肉体こそないものの、彼は誰もが認めるヒーローに違いない。

 こういった映画では筋肉質な主人公が力業で解決するような場面をよく見るが、クリスチャンは常人でしかない。ホテルウーマンの妻も同じく一般人なはずだが妙に冷静で体力もある。ご都合主義で進める為には彼女らが強くなければ話が成立しないのは分かる。ただ個々の資質に頼りすぎているきらいはあった。

 私にとっては名作だが、リアリティを追求する人やパニック時の人々が見せる冷静さに欠いた行動が理解できないような人にしてみたら微妙だろう。それに贔屓目なしに言えば出来映えとしても少し整ったB級映画といったところだ。ただこういう作品を観て自分はどんな時でも冷静に対処できると思っているような人こそ実際の災害では気をつけた方がいいだろう。

 実際の災害でも本来なら助からないであろう場所を選んで生き延びた者もいれば、冷静に対処してそのまま命を落としてしまう者もいる。現実でヒーローと遭遇する機会などそうそうなく、それぞれが限られた時間で少ない選択肢から生存する確率の高い方法を見つけなければならない。私は緊急時でも彼のように振る舞えるだろうか、と考えさせられる映画ではあった。

1000文字 編集

原題:Snatch
104分

 あるところでは鮮やかな手口で見事に犯罪をこなす強盗団が居た。またあるところでは素人集団の強盗団がやらかしていた。そしてまた別のところでは恐ろしく強いボクサーがボクシングをしていた。様々な連中が絡み合い、それぞれが自身の目的を果たすために協力し、裏切る。とてつもなくでかいダイヤモンドは血生臭い世界で生きる彼らの世界を映し出す。

 各キャラクターの名前を覚えきる前に気付けば終わっていたような映画だった。こういう映画が好きだという人の気持ちも分かる。だが私には合わなかった。面白い面白くないという話ではなく、2クールのアニメを総集編として再編集したような感覚が強かったのである。それも緩急が極端で、そこに時間を割いてそこは短く済ませてしまうのかと思ってしまうような場面もあり、スピーディーかつ独特なテンポに馴染めなかったのだ。

 キャストは豪華だしグロさは少ないがスプラッター要素もある。おまけに犯罪やコメディまで付いてくる。私の好きな要素がここまで入っていて、ストーリーの流れやラストも嫌いではないのに合わなかった。自分でも不思議である。群像劇も嫌いではないのに何故だろう。自分にとって魅力的なキャラクターが少なかったのかもしれない。だがその程度で大きく変わるとも思えず、やはり面白いんだろうけど合わなかったの一言に尽きる。

 好きなシーンはどこかと聞かれたらぐだぐだな強盗シーンで、好きなキャラクターを挙げるとしてもそこに居た彼らだろう。もしかすると私はパルプ・フィクションのような映画だと思っていたのかもしれない。だからすんなりと進むストーリー展開が物足りず、彼らが関わり合うことで起きる影響も微々たるものに見えてしまったのだろう。映画通なら好きかもしれないが、単なる映画好きの私としてはなんともいえない映画だった。

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原題:Suspiria
99分

 バレエの名門校に入学すべくスージーはアメリカからドイツまでやってきた。何故かその地に着いてから妙な感覚や気分の悪さに悩まされており、遂には体調不良で気を失ってしまう。奇怪な事件に奇妙な出来事は連日続き、スージーもさすがに何かおかしいんじゃないかと考える。しかし想像を遥かに超える真相に近付き……。

 ホラーが好きなのに観ていないのか、という声があり本作に目を通した。主題歌とタイトルは知っていても具体的にどんな映画なのかは知らなかったので、余計な知識がないまま色々と想像する機会が得られたのは非常に良かったと思う。けれども不条理が許されるホラーと、トリックや動機が重視されるミステリーやサスペンスの混ざり合った作風は個人的には微妙だった。どちらかに集中して欲しかったのである。

 人が死ぬシーンはどちらでもそれなりに満足できる。ホラーっぽくもあり、誰かが仕組んだトリックのようにも見えるのだ。ただあまりにもあっさり人が死ぬ。その死に呪いであったり儀式であったりと法則性や関連性が色濃く出ていれば、考える楽しみから真相に触れる喜びにも繋がっていた。だが本作にはそれほど深い理由はない。誰かにとって都合が悪いから死ぬ。ただそれだけなのだ。

 ホラーやスプラッター要素を重視して、もっと血を増やすか超常現象のようなものを増やしてくれたらよかった。謎は謎のままにしてくれた方がホラーとしてはぐっとくる。謎が明らかになった瞬間に落胆したのは私だけではないだろう。ジェシカ・ハーパー演じるスージーの魅力が乏しければ途中で諦めていたかもしれない。世間的にはホラーの名作でも、個人的には気合いの入ったB級ホラーだった。

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原題:Yes Man
104分

 自ら退屈な日々を選択するかのようにノーと言い続けたカールが怪しいセミナーに参加し、今度はなんでもかんでもイエスと言うようになる。たったそれだけで人生は大きく変わり、様々なチャンスに恵まれる。しかしいつまで経ってもそれで通用するとは限らず、カールはイエスが引き金になってピンチも迎えてしまい……。

 ノーと言えない日本人という表現がある。これは心優しいのか自分の意思というものがないのか、知らず知らずにイエスマンになっている日本人の国民性を現したものだ。ノーと言える外国人が日本人さながらにイエスと言えばどうなるか。その模様を描いたのがこの映画だろう。彼の場合は極端だが、まあこんなものかもしれない。

 率直な感想としては、こんな展開あり得ない。しかし本当にそうだろうか。自分の常識というものに囚われてはいないか。あり得ないとは言ったが、どれも不可能というほどではなかった。運良く偶然が重なれば昇進もするだろうし、運悪く偶然が重なれば警察に睨まれることだってあるだろう。これは一つの可能性を描いた映画なのだ。

 人生が失敗続きで何もかも上手くいかない。何の意味も見出せない日々を過ごしていれば死にたくもなるだろう。そんな人生を変える切っ掛けがカールにとってのイエスだった。言葉一つ、行動一つ変えてみれば世界が変わる。怪しいセミナーじみてはきたが、そういう人生の変え方について教えてくれるのが本作である。

 人生が上手くいっている人からすれば、本作は退屈な映画にもなりえる。なにせ退屈な人生からようやく抜け出して、これから面白くなっていくというところで映画は終わってしまうのだから。何か思うところがあって考え方を変えたいという人にはいいだろう。良い作品だが、打ち切りのような印象もあるのが少し残念なところだ。

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原題:The Hangover Part III
100分

 大きなトラブルを巻き起こして父親を疲弊させ、脳か心臓かはたまた血管に負担を掛けさせてしまったアレン。哀れにも父親は命を落としてしまい、家族はアレンを何とかしようと画策する。ところが治療するために病院へと連れて行くことになり、自動車を走らせていると酔ってもいないのに得体の知れない集団に襲われてしまう。彼らは何なのか。アレンはまともになれるのか。今までとは異なる展開で物語が動き出すのであった。

 タイトルはこれまで通りのハングオーバーということで、そのまま訳せば二日酔いである。しかし今回は二日酔いではない。素面のまま身に覚えのないトラブルに巻き込まれる形でストーリーは進む。だがトラブルの原因には深く関係しており、今彼らが置かれている状況は二日酔いが招いたものである。二日酔いからのスタートという定石からは外れたが、二日酔いで何かが起きて解決するという流れは本作でも健在である。

 まさかお前がずっとレギュラーなのかという驚きや、お前はもう出ないのかよという突っ込みが出そうになるが、これまでの活躍ぶりを見ればこの人選になってしまうのも仕方ない。彼がいなければ最初の大事件も発生せず、彼と関わっていなければ以降のシリーズも産まれない。真の主役は彼だ。それが良いか悪いかは別として。興行収入も評価も下げてしまったのは彼が出しゃばりすぎたせい……かどうかは分からない。

 相変わらずのテンションでお馴染みの流れ。しかし勢いは落ちていくばかり。娯楽作品だから雰囲気を楽しめたらそれでいいって人にはいいが、とりあえず映画として完結させましたという印象が強く、ハングオーバーは3部作になってしまっただけのシリーズとも言える。1作目でそのまま終わっていた方が良かっただろう。蛇足に蛇足を重ねては地を這うのにも不便で、足も揃わない。迷走してしまうのも致し方ないのだ。

 それでも佳作にしてしまうのは、こういう馬鹿馬鹿しい娯楽映画そのものが好きだからである。マンネリを何とかしようとしている努力は見えたわけで、随所で笑いを取ろうとしているシーンもあった。最後の最後でまたお馴染みの流れを繰り返すのも作品そのものへの愛を感じられる。娯楽を作り、完成させようとした者が居た。その事実だけで嬉しくもなる。馬鹿馬鹿しい映画を観たい。そんな人だけが観ればいいのだ。#ハングオーバー!シリーズ

1038文字 編集

原題:The Hangover Part II
102分

 仲良く酔っ払って酷い目に遭ったフィル達はまた懲りもせず二日酔いでよく分からない状況に陥っていた。どうしてそこに居るのか、何故彼はいないのか。1作目と変わらない展開のまま、また彼らの記憶を振り返るストーリーが始まる。

 率直に言ってしまえば前作が全く合わなければ今作も合わないだろう。一部は前作以上のインパクトもあるが、前作ほどの新鮮味はない。酔っ払う直前までのストーリーを観た後で二日酔い後の朝。それから数少ないヒントを頼りにあちこち飛び回る。大筋がここまで変わらなくても許されるのはコメディだからだろうか。だが批評家は厳しく、評価も低い。興行収入が少なければここで終わっていてもおかしくなかったのである。

 ところが不思議なことに私は前作よりも今作の方が合っていた。スプラッター要素の増えたこの映画が趣味に近かったのだ。確かに小休止のようなギャグは物足りなかった。それにアランの性格が極端に悪くなり、それを帳消しにする大活躍をする機会もないせいで単なる嫌なやつになってしまっている。その辺りを考えると、前作への思い入れが少ない人の方が楽しめるのかもしれない。

 オリジナルを超えられる要素が作れなくて過激さを足した可能性はあるが、その過激さが人を選ぶ要素になってしまっているのは残念だ。酒を呑みながらだらだら観ようと思っていた人が気分を悪くして視聴を諦める展開もあり得る。ただ名作かといえばそうではなく、迷作でもない。馬鹿騒ぎをするだけの悪くない映画。果たして最終作はどちらに転ぶのか。不安を抱えたまま、今日か明日には観てみようと思う。#ハングオーバー!シリーズ

744文字 編集

96分

 チープなゾンビ映画を撮る集団が撮影をしていると、なんと本物のゾンビと遭遇してしまう。カメラマンはカメラを置くこともなく、監督の意向に沿ってカメラを回し続けるのだが、次々と被害者は増えていくのだった……。

 かなり今さらな気はするものの、一昔前の話題作を遂に観てしまった。低予算インディーズ映画でありながらも大きな話題となり、予算の100倍を超える興行収入を得たというのだから恐れ入る。仕掛けは単純でジャンルとしてはゾンビというよりはファミリー映画。感動とまではいかないが家族愛を感じられる……要素がある。

 ただ正直に言えば映画としての面白さは微妙だった。裏でのやり取りが分かりやすすぎたのと、本編を含めて全体的にチープすぎたのが合わなかった。彼らが次の指示を待っていると分かるシーンが多ければ多いほど劇中劇の作り物感は増す。しかしプロフェッショナルらしさは減ってしまい、いくらなんでも対応力不足では? と思ってしまう。お芝居を見せるお芝居を見せられているというややこしさが戸惑いを生む。

 彼らはこういうものを作ろうとしています。そうして出来上がったのがこちらの作品です――という流れ自体には何の不満もない。ただ先述した通りチープすぎた。意図的に分かりやすく、そこかしこにヒントをばら撒いている。こういった作品の入門用とでもいうか、子供向け作品のような極端にシンプルな作りと過剰な演出が重なり、B級映画ファンとA級映画ファンの両方を遠ざけているように感じてしまうのだ。

 なんかおかしいな、で留めていれば驚きや納得もあっただろう。馬鹿らしさに突っ切ったせいかもしれないが、観客を驚かせたいのか家族を描きたいのかテーマを絞って欲しかった。それでも本作はヒットしたし、面白かったという声も多い。納得していない者も多いが、それはこの作品の何を見ているのかにも寄るのだろう。

 面白い映画を観たいという者からすれば、本作は微妙だろう。ソンビもパニックも作り物。人によっては耐えられないほどの退屈な時間を抜け出したかと思えば映画の裏側。ここでそうなっていたのか、と初めて気付いて驚く楽しみもあるかもしれない。やはりそういう裏事情があったのか、と確信して楽しむのもアリだろう。けれどもそれは最初のチープな映画自体に興味を持てないといけない。ここが最初で最後の難関だ。

 ちなみに私は『the FEAR』という古いゲームを思い出しながら映画を観ていた。そのゲームでは番組撮影のカメラマンとして主人公を操作し、ハプニングに巻き込まれる。そちらもなかなかチープ感が強いものの、恐ろしいことに驚くような仕掛けはない。カメラは止まらず、現実離れした出来事と遭遇して悲惨な目に遭う。それはそれは凄い仕上がりなのだが……これはこれとして楽しめた。さて、この違いはなんだろうか。

 私が思うにこの映画は娯楽を追求しすぎたのだ。一方で先述したゲームはゲームとしての楽しみをある程度理解していた。可愛いタレントとちょっとした謎にホラー。映画監督役の彼ではないが、顧客が望むそこそこのラインを維持していたのだ。「これはこういう娯楽映画だ!」とごり押しされて受け入れられる人なら面白い。「ゾンビは?」「話題になってた要素はこれ?」と別方向に期待してしまっていた人には物足りない。

 だらだらとよく分からないことをうだうだ書いてしまったが、決して面白くないわけではない。上質なホラー映画を観たい気分の時に上質なミステリー映画を観てしまったようなものだ。悪くはないが、これじゃない。ただこういった映画が大衆に受けるというのは素晴らしいことだと思う。作り上げる楽しみと感情の共有。それが面白いという感想に繋がるのだとすれば、大勢と創作の楽しみもわかり合えるのだ。

 普段映画を観ないで、文化祭で盛り上がるのが好きだという人にはおすすめだろう。

1626文字 編集

原題:Predestination
97分

 事故と火傷。人によっては直視しがたい場面から物語は始まる。男は手術によって一命を取り留めるが顔は火傷が酷く、まるで別人のような顔を与えられる。彼は当然変化に驚くが、受け入れて任務に向かう。なんとこの男の正体はタイムスリップをして犯罪を未然に防ぐ秘密裏の組織の一員だったのである。彼は連続爆弾魔を捕まえるべく正体を偽り、ある相手と接触して会話を交わす。すると相手は昔話を始めるのだった……。

 タイムスリップという単語からも分かるように、本作にはSF要素がある。というか要素どころか物語の展開も核も何もかもがSFで構成されている。連続爆弾魔は誰か? 逃げた男は? 組織とは? SFといえば作品によっては小難しい言葉と設定で訳が分からなくなることもあるが、こちらの映画は比較的優しい方だろう。分かりやすく、それでいて面白い。タイムスリップを軸に置いた映画としてはトップクラスだろう。

 過去に『LOOPER/ルーパー 』の感想を書いたが、こちらは逆に分かり難く物足りなかった。登場人物の行動原理や目的といったものの差がはっきりしており、もやもやしたものを抱えたまま終わったルーパーに対し、本作はすっきりとした気持ちでスタッフロールを眺めることができた。内容としてはルーパー以上にややこしいこともしているのだが、伏線の張り方と見せ方がうまく、パズルのピースがぴたりとはまっていく感覚が得られる。

 この作品は面白い。手放しで褒めよう。SFというジャンルではなく、映画という娯楽の中でも上位に位置する。タイムスリップや犯罪ドラマ、哲学といったものに興味があれば間違いなく楽しめるだろう。ややこしい上に難しい内容ではあるが、しっかり話を追えば理解できる。だが、一つ文句を言わせてもらう。どうしてこんな名作が既にあるんだ? こういう作品はいつか自分の手で作り上げたかった。その才能には嫉妬を覚える。

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原題:Horrible Bosses
98分

 仕事は嫌いではないが上司に恵まれなかった3人の男たち。彼らは上司さえ違えばと頭を抱えていた。度重なるストレスに限界を迎えた後、3人は犯罪者風の男にけしかけられて上司の始末を決意する。しかし杜撰な計画のせいで失敗してしまい、挙げ句の果てには大きなトラブルの原因を招いては酷い現場を目撃する。それでもモンスターのような上司をなんとか始末するため、彼らは協力しあうのだった。

 ブラックコメディということでなかなかに下品だったりやりすぎな面もあったりするが、ノリとしては小学生の悪ふざけに近い。だがお色気シーンはジェニファー・アニストンの演技とスタイルのせいもあってか、もうポルノ扱いになりそうな気もする。しかしこんな上司が日常的にいやらしい仕草や姿を見せつけていてよく耐えられるものである。本人は嫌でも周りからすれば羨ましいという感想を抱いてもおかしくない。

 ケヴィン・スペイシー演じる上司はハラスメントが日常的で憎たらしく、コリン・ファレルの演じる麻薬常習犯の上司は思考回路が滅茶苦茶で一緒に居ると疲れるだろう。前者は『ハウス・オブ・カード 野望の階段』の手段を選ばない議員そのままで、個人的に抱いていたイメージそのままだった。しかし後者に関しては『フォーン・ブース』とはイメージが違いすぎて、やはり俳優は凄いなと感心させられた。

 ちょこちょこ挟まれるお色気要素と頻繁に出てくる下品な表現は人を選ぶものの、映画は娯楽だと考えて許容できる人からすれば面白い映画だろう。ただ残念なことに面白いだけで、あっと驚く仕掛けや伏線といったものはない。馬鹿なことをしている大人の姿を見せられるだけである。といっても先述したとおりで、娯楽とはそんなものだ。頭を使わずに笑っていられる。そんな映画も良いものだろう。#[モンスター上司シリーズ]

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原題:Bride of Re-Animator
96分

 ハーバート・ウェストとダンは戦地に赴き、治療をしつつ相変わらず実験を続けていた。そろそろ自分達の命も危ないというタイミングで帰国すると、彼らはまた同じようにいつもの場所でいつもの実験を再開する。今までは死体を蘇生するというテーマで活動していたウェストだが、死体を組み合わせて蘇生するというとんでもない実験まで行うようになり……。

 展開は前回同様で実験の成功と判断の過ちによる失敗を繰り返すもの。新鮮味は一切無いものの、彼らのおかしな行動はコミカルで笑える。基本的にはどの登場人物も目的を見失っているようで、どうしてそこでその行動を取ってしまうのかと思ってしまう。それにウエストはもう少し自分の性格を理解すべきだ。指の固まりにせよ詰めが甘い。

 序盤はおどろおどろしい気もするが終盤に向かうとコメディ色が強くなり、Happy Tree Friendsのような不条理でグロいギャグを見ている気分になる。実験がうまくいくのかどうかという観点では見ることができず、実験の失敗がどう繋がるのかという展開を期待してしまうのである。つい彼ばかり注目してしまうが、ダンもダンだ。

 前作のラストが出来心なのは分かる。今回も愛故の暴走だとは思う。しかし余りにも意思が弱い。全くストッパーになれていない。コミュニケーション能力に欠けるウェストの代わりに存在するだけの立場になっている。なんと地味なキャラクターだろうか。ERのジョン・カーターみたいな外見と性格だが、彼には根っこがない。薄っぺらいのだ。

 本作はサービスカットも控えめで、個人的には前作よりスプラッター要素が抑えられていたように感じた(配信でカットされているのかもしれないが)。デッドプール2同様に売りが弱くなっている印象を受けたのだ。ところがそんな内容でも2003年には続編が公開されている。今度こそはと期待して観てみたいが、現時点では配信タイトルに存在しない。いつか観る機会があれば気楽な気持ちで観てみたいものだ。#死霊のしたたりシリーズ

888文字 編集

原題:The Lost Weekend
101分

 売れない小説家のドン・バーナムは重度のアルコール中毒だった。どうしても酒が呑みたいという理由で酒を窓の外に隠すほどだが、それも兄に見つかってしまう。兄と恋人は彼を心配しているのだが、彼は酒を呑めないストレスで苛立ってばかりいる。この物語は中毒症状の男がひたすら酒を求め、泥沼に沈み、道を踏み外す描写が続く。起承転結で言えば承のまま続き、静かな転換を迎えて結末へと繋がるのだ。

 最近はなるべくネタバレにならない範囲で少しばかり文字数の多い感想を心掛けていたものだが、この映画はあっさりした説明でもネタバレになってしまう。キーアイテムを触れればそれが全てに影響し、印象的な台詞がどこかへと続く。ビールでも呑まないとタイプ音も重く、さてどこをどう伝えたものかと悩んでしまう。

 アルコール中毒の症状が悪化していく過程と彼の静かな変化。時折入る回想と変わらない姿。人が駄目になっていく様子を描いた作品としては良いのかもしれないが、ひたすら悪路を突っ走っていく主人公を見ているのは辛くもある。作中の曲もおどろおどろしく、これはもはやホラーではなかろうか。

 この映画を楽しめる人は、様々な展開を思い描ける人だろう。ここでもし彼が酒を断っていたらという前提で未来を想像したり、ここまで悪化する前に彼女がなんとかできていたらと考えてみたり……しかしどれもこれも結局は酒である。要はこの作品にとって酒は切り離せず、主人公自体を代えるしかないのだ。なんとも哀れである。

663文字 編集

原題:Peppermint
102分

 ライリー・ノースには大切な家族が居た。金持ちの主婦からは馬鹿にされ、娘の誕生日パーティーを台無しにもされた。けれどもめげず、家族で楽しもうと外出する。それは確かに楽しい時間で、後になって振り返ればきっと良い思い出になる。誰もがそう思っていたが、幸せなひと時は麻薬密売組織の襲撃によって打ち砕かれてしまうのだった……。

 この作品の主人公は主婦だ。とびきり優秀な外交官 ですらない。そんな主婦が生き残り、復讐を決意することで物語が始まる。しかし彼女はいきなり復讐を実行するのではなく、確実に復讐を完遂することを考えて自らを鍛え上げた。5年もの月日は彼女を優秀なソルジャーへと鍛え上げ、恐ろしいまでの強さを発揮していく。

 少しは危険な目にも遭うが、彼女が桁外れに強いおかげで緊張感は特にない。安心して見ていられるアクション映画と言えるだろう。それもそのはず、監督はピエール・モレルなのだ。リーアム・ニーソンが敵を圧倒する『96時間 』の監督と考えれば、主人公が強くとも違和感はない。むしろ弱い方が強い違和感と動揺を誘うだろう。

 ジャンルとしてはスリラー映画、またはスリラーかつアクションらしいがスリラー要素はほぼ無い。最初から最後まで分かりやすく大味なアクション映画だ。一体誰が内通者でライリーは大丈夫なのか? とはらはらさせてくれたらよかったのだが、内通者として疑える候補がそもそも少なく、ライリーは極端に強すぎた。

 映画に小難しい説明はいらない。面白ければそれでいい、という方には十分楽しめる作品だとは思う。復讐劇のアクション映画としては名作だと言う方も中には居るだろう。ただ個人的にはいくら鍛えたとはいえ、ただの主婦がここまで強くなれるのかと気になる。ついでに強くなるまでの描写が薄く、説得力は正直弱い。

 平凡な主婦から強靭な女戦士へと変化するライリーを演じたのはジェニファー・ガーナー。特に何の意識もせずにこちらの映画を観たのだが、奇しくも昨日レビューした『ザ・コンサルタント 』で主役を演じたベン・アフレックの元奥さんである。いっそのこと二人が互いに親権を争うアクション映画を観てみたいと思うのは悪趣味だろうか。

956文字 編集

原題:Funny Face
103分

 世の中には平々凡々とした生き方を選ぶ者が多い。それには芸能界のような華やかな世界にはついていけないと思ったり、元々そういった世界に興味がなかったりとそれぞれの理由がある。この作品の主役であるジョーは自分が芸能界でやっていけるとは思っておらず、そういった職業自体に興味を抱いていない。しかしひょんなことから大役のモデルを任されてしまう。

 ジョーを演じる女優はオードリー・ヘプバーン。作中ではメイクをしてからその美貌を誰もが認めるのだが、本屋で働いているただの店員として登場した瞬間から誰よりも輝いている。この美貌に気付かない連中に一体何が分かるのかと文句を言いたくもなるが、もちろんその魅力に気付く者がいるおかげでモデルへの道が拓けるのだ。

 モデルになったジョーと写真家のディック。そして編集長であるマギー以外は目立たないが、コミカルな動きのミュージカルと合わせて終始心地よい気持ちで三人の姿を見ていられる。展開はありきたりとも言われそうなものだが、無駄のない演出と地味になりがちな箇所でのミュージカルが飽きさせない。特にカフェでのダンスは色々な意味で凄い。

 脚本の面白さに加えてミュージカルの楽しさ。オードリー・ヘプバーンの美しさにフレッド・アステアのダンスと本作の魅力は多い。ケイ・トンプソンもありがちな作品ではひたすら性格の悪い役になりがちだが、少し癖が強いだけで良い性格をしている。魅力的な三人の異なる個性は相乗効果を産み出し、良質な世界観を作り出す。間違いなく今でも楽しめる良い作品である。

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原題:Survivor
97分

 優秀な外交官であるケイトは日々職務を全うしている。その日も彼女は怪しい人物を見つけては本当の目的が何かを突き止めようとするのだが、同僚に邪魔されてしまう。彼女が疑い深いだけで何も問題はない――と思われたが、ケイトの直感は当たっていた。その人物を疑い、調べてしまったがためにケイトは命を狙われる羽目になってしまう。

 命の危機に曝されつつもなんとか生き延びて、ケイトは一人で行動していた。しかし運悪く容疑者の濡れ衣を着せられてしまい、着々と悪人へと仕立て上げられていく。けれども彼女はそこら辺の警察ではとても太刀打ちできない。何故なら彼女は優秀だからである。……そう。いくらなんでも優秀なんて言葉では説明できそうにないが、そう説明するしかないのだ。

 いっそスパイであって欲しいくらいに優秀な外交官と、噂の割に女一人仕留められない伝説的な暗殺者。もう少し設定はなんとかならなかったのだろうか。多少のパニックはあっても冷静になるのが早すぎる気もするし、暗殺者はヘマが多すぎる。最後の方も容疑が晴れていない割にあっさり和解しすぎというか……。脚本に難はあるが、娯楽映画としては悪くもない作品だろう。

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原題:Exam
101分

 色々と謎が多い企業の就職試験会場には8人の男女が集まっていた。試験監督が口を開き、彼らは試験に備えて集中していくが……いざ試験用紙を捲るとそこには何も書かれていなかった。白紙の試験と制限時間。彼らは試験監督の言葉を振り返り、問題を見つけようとする。ルールは何か。ルールの真意とは。ある受験者がルールの意味を理解したところで物語は動き出す。

 限られた舞台、決まったシチュエーションでの映画はそれなりに存在する。棺桶に閉じ込められて土の中に埋められた男が主役の『リミット』や、電話ボックスを舞台に口先だけでなんとか事態を乗り越えようとする『フォーン・ブース』は個人的にも気に入っている。ただ本作の場合はそれらの作品とも違い、部屋を移動しない『キューブ 』といった方が分かりやすい。

 どうにかして試験に合格し、高額な報酬を手に入れたい。だからこそ仕方なく協力しあうのだが、採用予定の人数はすでに決まっている。お互いの本質を露わにしながらも目的の為に行動し、裏切る。彼らがどういう立場で問題が何なのかといった点は割と分かりやすいが、個性が絡み合って退屈させない作りになっている。人間ドラマファンのみならず、脱出ゲームやひらめきを重視するクイズ番組辺りが好きな方におすすめしたい。

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 洋画中心。最低でも週に一本はレビューするつもりで定期更新。※現在は創作や仕事に集中するため、ほぼ停止中。

 レビューを書き始める前に観た映画の一部リストはこちら。好みの参考にどうぞ。趣味が合う人は名作を、趣味が合わない人は迷作をチェックすると好きな映画が見つかるかもしれません。

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