カテゴリ「フランス」に属する投稿[13件]

原題:Land of the Dead
93分

 ロメロが随分と久しぶりに撮ったゾンビ映画。当然のように世界はゾンビで溢れているものの、生き残っている人間もそれなりに頑張っている。ある程度の戦力は確保しているのだが、残念なことに人間は油断してしまう生き物なのだ。うっかりピンチになっては死を招き入れるそんな世界で、チョロやライリーといった傭兵たちはそれぞれの目的を達成すべく、己の意思で突き進んでいく。
 構成としては割と単純で、ゾンビのいる世界でも未だに存在する人間社会のいざこざが物語に大きく絡んでくる。各々の力が弱ければ、ゾンビという共通の敵だけを相手にしたのかもしれない。ただそれでは物語の深みもなく、退屈なシーンばかりになるだろう。ゾンビが居ようと居まいと人間は人間で、自分勝手な生き物。ロメロは毎回そんなことを伝えてきている気がする。
 主役の一人であるジョン・レグイザモは『ER緊急救命室』のクレメンテ、サイモン・ベイカーはといえば『THE MENTALIST メンタリストの捜査ファイル』のジェーンと個人的に好きな海外ドラマで印象に残っているキャストだったのが印象的だ。といってもそれは本編とは何の関わりもなく、もし彼らのファンでゾンビ映画を普段観ない人なら楽しめるだろうという程度だ。
 ホラーやゾンビ映画としては十分満足出来るだろうし、ロメロっぽさも感じられる。だが新鮮味はそこまでなかった。よくある映画にロメロの味付けが加わった程度であり、彼のゾンビ映画を観たいというファン向けの作品に終わっていた。ロメロ作品にありがちな力で引き裂かれるシーンなんかは特にそうだと思う。
 映画としての面白さはある。様々な要素で楽しめるのも確かだ。だがもう一捻り何かが欲しかった。

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原題:Alibi.com
90分

 アリバイドットコム。その名の通りアリバイを作ることを目的に設立された会社である。社長のグレッグは多くの顧客を抱え、その中には有名人までもが含まれていた。しかしある依頼で引き受けた顧客の娘と偶然知り合い、恋に落ちてしまう。後ろめたさもあり契約の破棄を迫るがうまくいかず、自身の経歴も偽ったままアリバイ作りに加担することとなるのだった。

 邦題にヒャッハーと付いているだけで、立て続けにレビューしている作品との関連性はない。同じ監督で同じコメディグループが前面に出ている以上は続編のようなものと言われても仕方ないが、ストーリーの繋がりは一切無い。これまで以上に人を選ぶネタが強化されているのが特徴で、下ネタが合わない人も多いのではないだろうか。

 トラブルに巻き込まれてどうにかするという展開はお馴染みだが、元々アリバイを偽装するような会社だからかグレッグや周りの仲間は割と色々誤魔化す能力に長けている。それ以上に厄介な欠点が足を引っ張りもするせいで結果的に失敗してしまうのはまあ仕方ない。何もかもうまくいってしまえば嘘吐きがただ幸せになるだけなのだから。

 監督の下ネタがちょっと無理だったという人には見せられないが、逆に下ネタが良かったという人には問題なくおすすめできる。構成も勢い任せのヒャッハーな展開ではなく、そのまま時系列通りに進んでいく。下ネタに抵抗がなければフィリップ・ラショー監督に触れる最初の作品にしてもいいだろう。……本当に。下ネタに抵抗がなければ。

 個人的には名作よりの佳作である。ただ迷作扱いされてもおかしくないとは思っている。長尺のコメディを見せられているだけで、ゲームや映画のオマージュなんてものも分かる人には分かる要素でしかなく、ある場所から飛び降りようとするシーンやあるものを振り回すシーンなんかは、興味が無ければ間延びした無駄に長いだけのシーンとなる。

 この監督は映画やアニメ、ゲームといったものを心から愛しているのはよく分かった。そういうものに触れていればより楽しめるという見方も出来れば、理解しているからこそ各々の拘りによって受け入れがたくなるという見方も出来る。当然ながら知らなければその土俵にすら立てない。勧めたいが勧めにくい。実に癖の強い厄介な監督と映画だ。

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原題:Babysitting 2
93分

 フランクは恋人のソニアといつもの面々でリゾート地へと向かう。目的地にはソニアの父が経営するホテルがあり、彼はそこでソニアにプロボーズをしようと考えていた。ところが再びトラブルに巻き込まれてしまい、ソニアと別行動をしたままフランクらは行方不明になる。何故かホテルの近くにはカメラが落ちており、その映像を検証するのだが……。

 また同じような展開で進む続編。規模は大きくなったものの、残念ながら二番煎じに終わっている。この辺りも『ハングオーバー!シリーズ 』のようで複雑な心境だ。続編だから仕方ないとはいえ、原題の子守も本作では意味が無い。祖母の子守をしているといえばそうだが、そんな表現でいいものかどうか。サブタイトルの方がよかったのでは? とは思う。

 前回は豪邸と遊園地が主な舞台で、本作は南国の島。必然的にヒロインらは薄着にもなるし、水着姿を惜しみなく披露してくれる。サービス要素は増したと言えるが、おかげでB級の感も強まった。B級映画もそれはそれとして楽しむ身で、エロ要素を歓迎する立場としては臨むところではあった。だが映画のアクセントやスパイスとしての力はなかった。

 最後の最後でうまくいっていい話にまとめようとするのもいい。しかしこれでは前作と変わらない。個人的に好きな映画を作れる監督には違いないのだが、コメディに強くとも独創性は欠けるように見える。続編のような扱いを受けている作品も視聴する予定ではあるものの、同じような構成で変わらない展開の作品になっていないか不安である。#[ヒャッハー!シリーズ ]

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原題:Babysitting
85分

 待ちに待った誕生日。パーティーを目前に控えたその日、フランクは社長から声を掛けられる。さて何かと思えば息子の子守を頼みたいと言う。パーティー当日に子供の面倒なんて……とフランクは断ろうとするが、ある約束と引き換えに子守を引き受けるのだった。しかし息子のレミは今時といえば今時な子供で、割と面倒な性格をしていた。更にただでさえ子守で苦労しているフランクの元にパーティーを強行しようとする友人らが迫り……。

 なんらかのトラブルが起こって、それが何だったのかを振り返る。『ハングオーバー!シリーズ 』を思い出す構成ではあるが、あそこまでぶっ飛んではいない。謎解きのようなものもなく、最後まで観てみれば全く違う映画だと分かる。シティーハンター経由でフィリップ・ラショーに興味を持って見たわけだが、妙なタイトルで敬遠せずに観て良かった。人を選ぶシーンは多いものの、エロにしたってエロすぎない。表現の仕方がマイルドなのである。

 登場人物の癖も控えめで、観ていて疲れる人や現実離れしすぎて興醒めしてしまうような人も居ない。もしかしたらこんなこともありえるかもしれない……? と思える範囲で馬鹿をやっているような映画(とはいっても日本人の持つ海外のイメージだけども)で、笑いを取りつつも家族の絆や愛というものを描いてくれるのは凄い。監督は2人居るとは言え、これが監督デビュー作だというのだから恐れ入る。尊敬どころか嫉妬すら覚えるほどだ。

 フランクも途中でやらかしてはいる。しかし元凶は悪乗りが過ぎた友人たちである。なんとかしようともがきつつも意中の人と愛を育みたいフランク。父にもっと構ってもらいたいレミ。物語の鍵となる人物の根がまともで色んな意味で良い性格をしているおかげで、多少妙なことになろうともどこか清々しく、視聴後の爽快感や充実感にも繋がっている。割とおばかでちょっと感動な本作は、ちょうど今のような蒸し暑い時期に観て欲しい。#[ヒャッハー!シリーズ ]

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原題:Nicky Larson et le Parfum de Cupidon
93分

 何でも請け負う優秀なスイーパーの冴羽獠(またはニッキー・ラーソン)は今日もライフルを構え、標的(トレーニング中の女性……の胸)を見つめていた。せっかく一流の腕があっても仕事をしなければ稼ぎもない。そんな状況を何とかする為にも相棒の香(あるいはローラ・マルコーニ)は美女の依頼だと偽って依頼を受ける。簡単に終わる依頼だと思っていたが、そこには同じく一流のファルコンが現れてしまう……。

 シティハンターの大ファンである監督が脚本も主演も担当し、またよく分からない実写化作品が出たと不安視されていた話題作である。しかし本作は作品への愛とリスペクトに満ちており、元の作品を知らずとも楽しめる娯楽映画として仕上がっていた。実写化作品は原作を重視しすぎて現実離れした作品になりすぎてしまったり、原作を軽視しすぎて得体の知れない何かになってしまったりするのだが……本作は実に良かった。

 原作やジャンプ作品、吹き替え版であれば出演声優の知識等があれば笑えるような人を選ぶ小ネタがさり気なく挟まれており、そういった知識がなくとも楽しめる小ネタもある。終始ふざけた雰囲気はあるがシリアスな場面では気にならず、そのシリアスさを利用したシュールな笑いも含まれている。それでいてアクションシーンの迫力も十分でアクション映画としての魅力も強い。これは手放しで面白い映画と断言できる。

 ただまあこれが嫌いだと言う者も居るだろう。元々が古い漫画作品ではあるわけで、今の差別だ権利だのと個々の主張が強い世の中では人を選ぶ表現が多い。女性を性的な対象として見ただけでクレームだろうし、穿った目で見る人からすれば香の扱いは足手まといの役立たずにも見えるだろう。そこには彼なりの愛があるわけだが、そういう人にそんなものは通用しない。それに下ネタというだけで無理な人も居るだろう。

 原作ファンには色眼鏡をへし折ってからとりあえず冒頭だけでも見て欲しい。ファンじゃなくともアクション映画や娯楽映画の良作を探しているのなら最後まで楽しんでもらいたい。実写化作品だからと侮ってはいけない。監督の愛は強い香水でも嗅いでしまったかのように強烈で、この映画を見ればその世界観に惚れ込んでしまうはずだ。

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原題:De toutes nos forces
90分

 ジュリアンは障害を持って生まれてきた。彼の父親であるポールが失業してしまい、久しぶりに帰宅したものの親子の会話といったものはない。ポールはジュリアンとの接し方が分からなかったのだ。気不味い雰囲気のままずるずると日が過ぎ、母親のクレールもストレスを抱えてしまう。ある日ジュリアンはポールの古い写真を目にして、彼が昔はトライアスロンに出場するほどのスポーツマンだったことを知る。ジュリアンはポールに近付いていくと、トライアスロンに出たいと宣言し……。

 障碍者の子と元トライアスロン選手が親子でトライアスロンに挑戦するという映画だが、ジュリアンは走ることも泳ぐこともできない。陸では車椅子に乗り、海ではボートに乗る。つまり父親のポールが車椅子を押し、ボートを引っ張ることになる。もしジュリアン自体が障害を乗り越えて地面を蹴り、波を掻き分ける姿を期待している人には視聴を勧められない。映画の主役はジュリアンとポールだが、トライアスロンの主役はポールだけだと考えても問題ないだろう。

 とはいえ屈強なスポーツマンでも脱落してしまうような競技のため、ジュリアンにとっては相当きつい。日差しは体力も水分も奪ってしまい、熱中症の危険も付きまとう。おんぶにだっこでただ競技に参加しているだけの存在にも見えてしまうだろうが、体自体をまともに鍛えにくいジュリアンが脱落しないだけでも十分に凄いのだ。たとえ我が儘な駄々っ子に見えても、騒げる体力があるだけ普通ではないと言える。

 と、ジュリアンのフォローをしてみたものの、やはりこの映画で凄いのは父親のポールだ。ポールは最初から最後まで重りを背負って参加しているようなもので、いくら元々トライアスロンに出場していたといってももうオッサンである。それにトレーニング期間も短く、1人で完走できるかどうかも怪しい。そんな人がひたすら泳ぎ、漕ぎ、走る。一体どうやったらこんなオッサンになれるんだろう。

 ポール役のジャック・ガンブランにはマッツ・ミケルセンのようなセクシーさもあり、頑張るオッサンの姿が妙に美しく感動的に見える。ちなみにこの映画、トライアスロンのシーン自体はそう長くない。終盤はひたすら競技シーンを見る羽目になるが、序盤から中盤にかけては親子の仲が深まっていく様子が描かれる。スポーツによる感動作というよりは、家族愛による感動作の方が正しいのかもしれない。

 良い映画だとは思うが、あらすじや予告から想像できる通りの物語といったところ。何の捻りもなく、これといった驚きもないままあっさりと終わる。親子愛や感動といったものを求めていればある程度満たされるだろうし、そうでなくとも駄作とまでは言い切れないだろう。映画というよりもやや演出過剰なドキュメンタリーのようなものと思えばいい。日常の延長線上にある幸せを噛み締めたい人に見て欲しい。

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原題:Ascenseur pour l'échafaud
92分

 ある目的の為に準備をしてきた男が計画を実行し、成功する。しかしお粗末な後処理のせいで現場に戻ることとなり……。展開としてはよくあるサスペンスだが、事前準備に力を注いでいたくせにどうしてそれを忘れるのか? と首を傾げてしまうストーリーは賛否両論だろう。動転していると言えばそれまでだが、ある場所から出る為に試行錯誤する様もスマートには見えない。視点が変化しながら様々な姿が映し出される演出が目立ち、気付けば主役も代わっている。面白いのは確かだが、色々と理不尽で納得しにくい箇所はあった。悪くはないものの、サスペンスに完璧さを求める者には物足りない作品だろう。

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原題:The Last Emperor
163分

 清朝最後の皇帝、愛新覚羅溥儀がどんな生き方をしたのか。また、どう去って行ったのか。壮大な歴史を壮大なスケールで描いた歴史映画。とはいえ歴史をそのまま表現したノンフィクションではなく、映画としての魅力が増す為の創作が随所に練り込まれている。どこがどう脚色されているのかは歴史に明るくなければ分かりにくいだろう。しかし登場人物が終始英語を話しているというのはどうも違和感が強く、なんとも複雑な心境になってしまう。これといって派手などんでん返しや演出も少なく、ただただ壮大で偉大な世界観に圧倒される。どこがどう面白いと伝えるのは難しいが、もし誰かに勧めるとしたら「とにかく凄い」の一言に尽きる。

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原題:The Commuter
105分

 いつも通りの日常を送り、いつも通りの電車に乗る。そんな日々が急に終わりきな臭い出来事に巻き込まれてしまう。主演がリーアム・ニーソンということで評価は甘め。そもそもよほどのことがなければ名作か佳作。会社をクビになってから大金が貰えるとなれば、主人公のような行動をとってしまうのもおかしくはない。誰が重要な人物なのか、という推理要素は少しあるもののそこまで難しくない。要注意人物とミスリードさせたい人物はさらに分かりやすく、やっぱり売りはアクション。しかしアクションは少なめで、やや消化不良か。推理要素とアクションが欲しい人の欲求には応えてくれるだろう。

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原題:Overdrive
94分

 高級クラシックカーを盗む兄弟が繰り広げるアクション物。彼らがやっている行為は強盗でしかないが、意外とそれなりに体術にも優れていたり、荒っぽいだけかと思いきや手口が鮮やかだったりと感心しそうになる。ただのクライムアクションかと思えば伏線もあり、そのままぼんやり観ていたら思いがけない展開もあるかもしれない。モチーフがモチーフなだけに作中でも様々なクラシックカーが登場する。車好きでアクションも好きな人は一度観ておこう。

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原題:Taken 3
109分

 うっかり三作目にまで到達してしまった相変わらずの爽快アクション。これまでの感想を観たら分かる通り、実は感想らしい感想を書いていない。それというのもアクションが中心すぎて、ストーリーに触れすぎると展開や伏線をあまり楽しめなくなるせいだろう。冒頭がこうで、途中がこうで……と書いてしまえば、アクションを観るだけになる可能性だってある。相変わらずリーアム・ニーソンは魅力的で、サブキャラの魅力を含めて個人的には満足できた。続編は作れそうなものの、さすがに主演の年齢がネックでアクションも不安が残る。続編は観たいが、ここで終わっても仕方ないだろう。#[96時間シリーズ]

311文字 編集

原題:Taken 2
91分

 前作で殺した相手の家族から命を狙われるけどやっぱり圧倒的な活躍を見せちゃう爽快アクション。前作は娘で今作は元妻が拉致されてしまうのだから、なかなかついてない。個人的な好みで名作扱いにしているものの、やってることは大して代わり映えしない。つまり前作が気に入って、同じノリを期待している人向けの作品となる。逆に前作の時点で物足りなかった人には向いていない。そういう人からすれば、この作品は佳作どころか迷作にもなり得る。しかし私はこれでいい。リーアム・ニーソンの活躍を観たいのだから。#[96時間シリーズ]

278文字 編集

原題:Taken
93分

 娘を愛する元CIA工作員が圧倒的な力で何とかする爽快アクション。こう書いてしまうとスティーヴン・セガールをイメージしてしまうが、彼ほど圧倒的ではない。しかしたとえ絶望的な状況になっても「こいつなら大丈夫だろ」と思える。アクション映画として、そして主演のリーアム・ニーソンが好きな私からすれば間違いなく迷作。残念ながら評価は割れてしまっているが、続編が二作も出ていることを考えれば好きな人は好きな作品であるに違いない。強いおっさんが好きな人は是非観て欲しい。#[96時間シリーズ]

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説明

 洋画中心。最低でも週に一本はレビューするつもりで定期更新。※現在は創作や仕事に集中するため、ほぼ停止中。

 レビューを書き始める前に観た映画の一部リストはこちら。好みの参考にどうぞ。趣味が合う人は名作を、趣味が合わない人は迷作をチェックすると好きな映画が見つかるかもしれません。

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