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原題:Profondo Rosso
126分

 テレパシーが使えるというヘルガ・ウルマンの講演には半信半疑の観衆が集っていたのだが、能力を疑う人らの前で彼女は所持品や名前を見事に言い当てる。もちろん事前に仕込んでいれば誰にでもできるテクニックではあるが、その場に居る者は彼女の力を信用する。しかし講演の途中で彼女の様子がおかしくなり突然妙なことを口走る。それだけで済めば良かったのだが、ヘルガは何者かに殺されてしまうのであった……。

 邦題にサスペリアと付いてはいるが、続編ではない。それどころかサスペリアよりも前に作られている。監督は同じダリオ・アルジェントだが、日本での公開はサスペリアの後だった。沈黙シリーズのように配役と展開で勝手にシリーズ化したものとは少し違うが、監督が同じで先に公開した映画が話題になったからと安直な理由で名付けられたのだから似たようなものではある。

 最初は邦題のせいであまり期待していなかったのだが、サスペリアとは関係なくよくできた映画だという情報も目に入ったことで観てみようと思えた。だがはっきり言って眠かった。サスペリアよりも退屈な印象を受けた。しかし徐々に引き込まれていき、今となっては有名な伏線にも驚かされた。人の視覚や記憶力というものは想像以上に雑な作りで誤魔化されやすいものなのだ。

 凄い映画である。とはいえ眠気を誘う内容なのも事実で、サスペリアでもあったゴブリンの曲が良くも悪くも特徴的。それにピアニストのマークがピアニストである意味はほぼ皆無な上に指の扱いが雑で驚く。凝っているが詰めが甘いとでもいうべきか、その面白さに触れるまでの待ち時間が長いのが難点だ。退屈でも耐えて、何の意味もなさそうな場面までしっかり目を通しながら違和感の正体を考えて楽しもう。

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原題:In the Line of Fire
128分

 警護官のフランクは大統領の護衛に失敗してしまう過去を持つ。それからというもの彼の人生は歯車が狂い、あまり良い人生は送れていなかった。年老いた今も現役で捜査官として働いている彼は、ある通報がきっかけで大統領を狙う暗殺者と接触する。姿も分からず、電話から聞こえる声だけしか知らない男を追い、過去の未練を断ち切るかのようにフランクは相棒のアルと捜査を進めるのであった。

 シークレットサービスのエージェント。ベテラン。そして相棒。見ただけでわくわくするような言葉が並ぶ映画な上に、主演はクリント・イーストウッド。いつか観ようと思いつつも放置していた作品に気付いた私は、よく分からないB級映画とは違って期待しながら視聴を始めた。それでもがっかりすることなく楽しめたのだから、さすが名作である。

 序盤から中盤までは相棒との掛け合いや暗殺者との親しげな会話が中心だが、フランクは途中から真面目になり、暗殺者は恐ろしさを見せていく。そこに至るまでの変化が良いバランスで描かれており、ひたすらシリアスな作品ほど気張らずに最後まで観ていられるだろう。ある銃の作りや弾丸の隠し方なんかはスパイ映画のようでぐっとくるのも良い。

 間違いなく好きな映画ではある。しかし具体的な舞台背景というべきか、時代がはっきりとはしていないのだがとあるシーンでは少しもやもやする場面もあった。それは暗視装置の有無だ。近代的な武器や兵器が誰よりも早く手に入りそうな組織だというのに、なぜそれがないのか。まだ試作すらもない頃であれば仕方ない。だが最初の暗殺事件から経過した時間を考えると……無い方が不思議だろう。

 娯楽映画にリアリティを求めるのはナンセンスで愚かだ。私もあまりそんなことはしたくない。けれども現実を絡めた映画になってしまっている以上は、どうしても細かい点が気になってしまう。かといって暗視装置に頼り、あっさり終わってしまうのも困る。難しい問題だ。最後にケチを付けてしまったが、良い映画には違いない。

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原題:The Terminal
129分

 ある目的のためにビクターはクラコウジアからアメリカへとやってきた。しかし本人は何も悪いことをしていないにも関わらず、国の問題でパスポートとビザが無効になってしまう。犯罪行為はしていないのだから逮捕する理由はないが、かといって過剰な特別扱いをしてやる義理もない。彼は少しばかりの優しさと企みによって空港の中での自由を手にするのだが……ビクターと彼を取り巻く問題はそう簡単には解決しないのだった。

 目覚めたら大人になっていたり海老を捕ったりボールに話しかけたり するトム・ハンクスが空港に閉じ込められてしまうという物語。どうしてこの人はこうも変わった人生を歩みがちなのだろうか。普通ではあり得ない運命を辿りそうな顔をしているのか、彼の表情や演技が普通ではないのか。はたまた起用する者が変人ばかりなのか。どの映画も彼はいつも通りで、何故かそれがしっくりくる。不思議だなあ。

 空港の中で一体何が出来るのか……という不安はそこまでない。空港の中で服も買えるし飲食だって可能だ。ただ住所未定だと仕事を探すのに一苦労する。仕事がなければ金もなく、金がなければ腹を満たすことだってできない。モラルがなければここで盗みを働くか、いっそのこと空港を出てしまうだろう。しかしビクターはそんなことをせずに金を稼ぐ。金を稼げずとも人柄のおかげで救われる。それだけ彼は魅力的なのだ。

 空港から出られない。その言葉だけで脱獄を想像し、『ショーシャンクの空に 』や『プリズン・ブレイク』のような地味な脱出から頭を使った手まであれこれ想像をしてしまう人は居ないとは思うが、そんな展開を待っていても描かれるのはビクターと彼らを取り巻く人達の人生模様でしかない。人々からすれば交通機関として活用する場所の一つでしかなくとも、そこで働く者や暮らす者にしてみたら人生の一部だ。

 彼らは空港で笑って泣き、飛行機を乗り継いで別の目的地へと向かうようにそれぞれの人生を進んでいく。空港で何ヶ月も足止めを食らうことがあったとしても、いつかはきっと前へと踏み出す機会を得られるのだ。諦めない心と受け入れる意思。それさえあれば人生だってなんとかなるのだろう。無人島も空港もそこで住みたいとは思わないが、ビクターのように人生を満喫してみたいものである。

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原題:기생충
132分

 その一家は半地下のアパートに住み、堕落しきった生活を送っていた。金もないのに内職の収入しかなく、煙草や酒を買うろくでもない日々だ。けれどもある日、ギウの友人で名門大学に通うミニョクが現れて家庭教師の仕事を紹介してくれる。採用されたギウは会話の中で家族のギジョンを紹介し、そのギジョンは父のギテク、ギテクは妻のチュンスク……といったように身分を偽って数珠繋ぎで家族全員が終結していくのであった。

 嘘で塗り固められた一家が金持ち一家にしがみつき、豊かな生活を送る。その様は正にパラサイトであり、よくもまあここまでやれるものだと思う。韓国映画には利益の為なら何でもやるような凄まじい人物が割と多い。その中でも凄まじさを煮詰めた人々が集結しており、彼らの姿を見ているからこそ終盤の展開や結末にも納得できる。1人だけかわいそうな気もしたが、悲惨な目に遭わせてしまうのも特有の展開といえよう。

 やっていることは非道で非常。どんな目に遭おうが因果応報ではあるのだが、所々で人間性が見え隠れているせいか比較的善人でも悪人に見える時はあり、反対に悪人が善人……または被害者のように見える機会もある。こうなっても仕方ないと思う反面で、ここまでいくのはどうだろうと味方になってやりたくもなるのだ。だがまあ近付きたくはないし、これはあくまでも傍観者としての見解に過ぎないだろう。

 実際に見て一番に思ったのは、人間のいやらしさがよく出ているといったところだろうか。前評判やそれまでのイメージ(とりわけ日本版の映画ポスター)から想像していた内容とは少し違った。てっきり最初から最後まで地下生活を送る一家の物語だと思っていたのだ。冒頭でいきなり出鼻をくじかれてしまったわけだが、起承転結をしっかり描こうとすれば避けられないのも事実。あれは回想で描いても地味で退屈だ。

 いつも通り洋画を観るつもりで映画を漁っていて、ついうっかりNetflixに追加されていたからなんとなく観てしまったが、思いのほか悪くなかった。ぶっちゃけた話をすると、数々の受賞歴も信用していなかったのだ。唐揚げやモン何とかセレクション、吹奏楽部の金賞並に一定水準を満たしたものを評価するものと同等に考えていた。その考えを良い意味で裏切ってくれて、時間を割くだけの価値はあったと思わせてくれた。

 ……とまあ、ここまでは割と良い部分について語ってみた。しかし個人的に名作ではない。思っていたよりは良かったが、そこで評価は止まっている。色々とご都合主義な面もあり、説明不足に感じる部分もあった。そしてなによりも展開が分かりやすすぎた。蛇口を捻れば水道水が流れ、コップに入らなくなれば溢れる。自然の摂理をそのまま表現したシンプルなストーリーが合わなければ迷作にもなりうる一本だろう。

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原題:The Accountant
128分

 どうみても強そうな会計士が優秀な仕事ぶりを発揮しながら迫りくる障害を跳ね除けていく。たったこれだけの文章で説明できる作品だが、いわゆるセガール作品や私が愛してやまないリーアム・ニーソンの映画よりはいくらか背景や目的、伏線といったものが用意されている。まあ最後まで安心して見ていられるのは前述した作品と変わりない。

 会計士がなんで強いんだと思われそうなものだが、きちんと説得力があり納得もできるだろう。彼にはそういう仕事を選ぶ理由があり、強くなれたのも鍛錬に因るものだ。家の中で暴れているシーンの時点で力はあるのだから、順当に鍛えて腕を磨かれたらそりゃ誰も敵わない。対抗できる人物が限られるのも当然だろう。

 作中だと主人公の抱える発達障害が問題として顕現する機会は殆どないが、もし彼に何もなければ知能も人並みになり、体を鍛えることもなかったかもしれない。この辺りの設定や背景の作り方はうまく、見事に活かしきっている。展開についても語りたいところだが、語ると楽しめなくなる恐れもある。これは主人公が極端に強い作品の宿命といえる。

 ちなみに以前別の感想でも書いたが、いくら内容が気になっても決して某百科事典を見てはいけない。こちらもせっかくの面白い要素をあけすけに書かれてしまっている。あらすじ本来の意味が作品の起承転結を表現するものだとしても、こういった作品のあらすじは予告程度に留めてもらいたい。ああいうものは日記帳にでも書いた方がいいのだ。

661文字 編集

原題:Good Will Hunting
127分

 大抵の人は優れたものを欲しがる。それは外見であったり、誰もが舌を巻く頭脳であったり、誰からも愛される人柄であったりと様々なものがある。本作の主人公であるウィルは外見も頭脳も優れており、本気になれば大抵の夢を叶えられるだろう。しかし彼は定職にも就かずに清掃員として働き、端から見れば非常に勿体ない生き方をしていた。

 もちろん彼がそんな生き方を選んだのには理由があり、自身の考えから今の人生を歩んでいた。才能を活かさない日常を送り続けるつもりだったが、彼も好奇心には勝てなかった。ある日の清掃中につい数学の難問を解いてしまい、お節介な教授に目を付けられてしまうのだ。そのせいでウィルの人生まで少しずつ変化していくのだが、性格まではそうそう変えられない。

 厄介な理由からこじれてしまった性格で様々な人に迷惑を掛けながら、彼は心を開ける相手を見つける。決まった時間の限られたコミュニケーション。長い時間を掛けて積み上げられた高く堅牢な壁にも小さな穴が空き、その穴は少しずつ拡がっていく。その穴から光が差したその時、ウィルはようやく本当の自分を曝け出すことになるのだった……。

 頭の良い非行少年の成長記。本作を一言で表現するとしたらそんなところだろう。しかし丁寧に練られた脚本と憎い伏線は、たとえ分かっていたとしても涙を誘う。道を間違えた時に正す存在ではなく、道を照らしてくれる存在。それに心から成功を願ってくれる親友。人と共に生きる難しさや喜び。本作を観れば大切な人と生きる日々の美しさを知ることができるだろう。

705文字 編集

原題:Die Hard
131分

 パーティーに参加する予定だった刑事が悲惨な目に遭うアクション映画。武器も揃えた犯罪者集団と刑事一人ではどう足掻いても勝てっこないが、不運にもその刑事は常識が通じない相手だった。うっかり危ない目にも遭うが、主人公は持ち前のセンスでどうにか切り抜ける。その姿は逞しく、あまりにも強い。後にシリーズ化されるだけあって一方的な強さを見せつけるだけではなく、意外にも丁寧な伏線が用意されている。アクション映画の面白さとストーリーの面白さがきっちり両立されていて、爽快感を味わいたい方には手放しでおすすめできるだろう。強いて言えば一部の方々は国民の命を守る意識が薄く、何の為に存在するのかと疑問が残る箇所もある。その辺りについては、爽快感からはほど遠いかもしれない。#[ダイ・ハードシリーズ]

366文字 編集

原題:Shutter Island
138分

 連邦保安官の主人公はある人物を探しており、別の名目で島を訪れる。なにやら色々と怪しい場所で妙な者達と邂逅しながらもどうにか捜査を進めるのだが……。捜査自体も裏の目的も同時に進行し、そこまで派手さはないものの次々と様々な出来事が起こる。中にもラストへと繋がる演出の数々はそれが何を表しているのかと考えさせられる。しかしその演出が過剰すぎるせいか、真実を理解しやすくもなっていた。それにこういった映画では付き物で、見た瞬間に何もかも理解してしまうようなコピーもご丁寧に添えられている。面白いが、色々と残念な印象ばかりが残ってしまう一作だった。

306文字 編集

原題: Dawn of the Dead
127分

 言わずと知れたロメロのホラー映画。現在主流となっているゾンビの生態や特徴は本作で確定したと言っても過言ではない……が、ゾンビ自体の設定はもっと古くから存在する。昨今のゾンビ映画と比較するとそこまでの恐怖感は無いものの、人類の無力さや絶望感は味わえる。また、あるゾンビの行動原理について考えるのも実に面白い。

185文字 編集

原題: THE EXORCIST
132分

 言わずと知れたオカルト映画。結局悪魔は何だったのか、何故彼女なのか。そんな疑問が浮かんでも悪魔だからとしか言えない。様々な謎は残るが、悪魔を題材にした映画としては満足できる。しかし動(恐怖や激しいシーン)が少なく静の場面が多い作りは人を選ぶだろう。尺の長さもあり、怖い映画を観たいだけの人には期待外れかもしれない。

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説明

 洋画中心。最低でも週に一本はレビューするつもりで定期更新。※現在は創作や仕事に集中するため、ほぼ停止中。

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