No.168

原題:The Terminal
129分

 ある目的のためにビクターはクラコウジアからアメリカへとやってきた。しかし本人は何も悪いことをしていないにも関わらず、国の問題でパスポートとビザが無効になってしまう。犯罪行為はしていないのだから逮捕する理由はないが、かといって過剰な特別扱いをしてやる義理もない。彼は少しばかりの優しさと企みによって空港の中での自由を手にするのだが……ビクターと彼を取り巻く問題はそう簡単には解決しないのだった。

 目覚めたら大人になっていたり海老を捕ったりボールに話しかけたり するトム・ハンクスが空港に閉じ込められてしまうという物語。どうしてこの人はこうも変わった人生を歩みがちなのだろうか。普通ではあり得ない運命を辿りそうな顔をしているのか、彼の表情や演技が普通ではないのか。はたまた起用する者が変人ばかりなのか。どの映画も彼はいつも通りで、何故かそれがしっくりくる。不思議だなあ。

 空港の中で一体何が出来るのか……という不安はそこまでない。空港の中で服も買えるし飲食だって可能だ。ただ住所未定だと仕事を探すのに一苦労する。仕事がなければ金もなく、金がなければ腹を満たすことだってできない。モラルがなければここで盗みを働くか、いっそのこと空港を出てしまうだろう。しかしビクターはそんなことをせずに金を稼ぐ。金を稼げずとも人柄のおかげで救われる。それだけ彼は魅力的なのだ。

 空港から出られない。その言葉だけで脱獄を想像し、『ショーシャンクの空に 』や『プリズン・ブレイク』のような地味な脱出から頭を使った手まであれこれ想像をしてしまう人は居ないとは思うが、そんな展開を待っていても描かれるのはビクターと彼らを取り巻く人達の人生模様でしかない。人々からすれば交通機関として活用する場所の一つでしかなくとも、そこで働く者や暮らす者にしてみたら人生の一部だ。

 彼らは空港で笑って泣き、飛行機を乗り継いで別の目的地へと向かうようにそれぞれの人生を進んでいく。空港で何ヶ月も足止めを食らうことがあったとしても、いつかはきっと前へと踏み出す機会を得られるのだ。諦めない心と受け入れる意思。それさえあれば人生だってなんとかなるのだろう。無人島も空港もそこで住みたいとは思わないが、ビクターのように人生を満喫してみたいものである。

985文字 編集

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 洋画中心。最低でも週に一本はレビューするつもりで定期更新。※現在は創作や仕事に集中するため、ほぼ停止中。

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