カテゴリ「1980年代‏‎」に属する投稿(時系列順)[8件]

114分

 ちょっとした切り傷や擦り傷程度であれば、大抵の人は軽く水洗いをして放置することも多い。しかし運が悪いと細菌に感染してしまう場合もある。身近にあって死亡率も高い破傷風。この感染症の恐怖を教えてくれるのがこの作品だ。映画を通して観れば、確かに恐ろしさも人間の弱さも描かれている。ところがホラー要素を重視しすぎたのか、色々と理不尽な(あるいはご都合主義とでもいうか)描写も見受けられる。ストレスによるパニックを表現するための発狂は問題ないが、破傷風の患者をあの病室に入れるのは意味が分からない。誰も破傷風について詳しくないという想定で撮られていれば、そういう時代だったのかもしれないとは理解できる。けれども作中で音と光に対する影響が語られている以上、納得できる者は居やしないだろう。驚くような展開はなく、先述した通りで粗もある。それでも視聴者を引き込む力はあり、機会があれば観て欲しい一本だ。

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原題:Die Hard
131分

 パーティーに参加する予定だった刑事が悲惨な目に遭うアクション映画。武器も揃えた犯罪者集団と刑事一人ではどう足掻いても勝てっこないが、不運にもその刑事は常識が通じない相手だった。うっかり危ない目にも遭うが、主人公は持ち前のセンスでどうにか切り抜ける。その姿は逞しく、あまりにも強い。後にシリーズ化されるだけあって一方的な強さを見せつけるだけではなく、意外にも丁寧な伏線が用意されている。アクション映画の面白さとストーリーの面白さがきっちり両立されていて、爽快感を味わいたい方には手放しでおすすめできるだろう。強いて言えば一部の方々は国民の命を守る意識が薄く、何の為に存在するのかと疑問が残る箇所もある。その辺りについては、爽快感からはほど遠いかもしれない。#[ダイ・ハードシリーズ]

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原題:The Last Emperor
163分

 清朝最後の皇帝、愛新覚羅溥儀がどんな生き方をしたのか。また、どう去って行ったのか。壮大な歴史を壮大なスケールで描いた歴史映画。とはいえ歴史をそのまま表現したノンフィクションではなく、映画としての魅力が増す為の創作が随所に練り込まれている。どこがどう脚色されているのかは歴史に明るくなければ分かりにくいだろう。しかし登場人物が終始英語を話しているというのはどうも違和感が強く、なんとも複雑な心境になってしまう。これといって派手などんでん返しや演出も少なく、ただただ壮大で偉大な世界観に圧倒される。どこがどう面白いと伝えるのは難しいが、もし誰かに勧めるとしたら「とにかく凄い」の一言に尽きる。

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原題:Brazil
142分

 一見少し物騒なだけの未来。しかしその世界は監視社会であり、もし何らかの違反行為をしようものなら捕まってしまう。それだけで済めばいいが、取り調べでうっかり殺されてしまうこともある。現代社会なら法廷で解決できそうなものだが、この世界ではそうもいかない。不都合なものを見てしまい、強く訴え出ようとすればやはり捕まる。しかし誰しもが監視しあっているような世界にも見えず、権力者が極端に優遇されているのを実感する程度である。本作の主人公は、そんな窮屈な世界で夢に見た女性と遭遇し、共に暴走する。終始やっていることはめちゃくちゃで不可解な上に所々ユーモアが挟まれる。しかしそれが独特な世界観に繋がっていた。もしその辺りの演出がなければ眠たいだけの凡作になっていただろう。どこかでありそうなリアリティと、浮世離れしたシュールレアリスム。一風変わった作品を探している方におすすめしたい。

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原題:Re-Animator
85分

 ハーバート・ウェストは非常に優秀な科学者である。どこでどうやってそんな知識や技術を身に付けたのかは不明だが、彼は死者を蘇生させる血清を作り上げてしまったのだ。もちろん彼を信じるのは難しく、ダンも信じてはいなかった。しかし実際に死体を蘇らせてしまう姿を見てしまい、ダンも興味を抱いてしまう。猫だけで済めばまだ良かったのだが、幸か不幸か彼らの身近にはいくつもの死体があり、実験には最適な環境が揃っていた。

 死んだ生物をもう一度生き返らせる。そんなファンタジーを題材にした本作はB級でありコメディでもある。けれどもジェフリー・コムズ演じるハーバート・ウェストには狂気と普通ではない雰囲気が出ており、馬鹿馬鹿しさと共に妙なリアリティが生まれている。きっと現実でマッドドクターのニュースが出る度に、私は彼の顔を思い浮かべてしまうのだろう。真面目そうでまともじゃないオーラを纏う不気味な笑顔を……。

 B級スプラッターとしては文句の付けようがない映画で、割と可愛い女優の裸体が出てくる辺りもそれらしい。しかしウェストは色々と勿体ない男だ。実験第一で物事が見えなくなるのは仕方ないが、彼にはイフを考える力が欠けていた。頭なら頭だけ、体なら体だけと実験対象は分けておくべきで、それぞれと真正面から向き合うべきだ。好奇心に負けて死体から目を背けてしまったばかりに苦労してしまった。

 本作はクトゥルフ神話で知られるラヴクラフトのホラー小説が題材となっているが、そちらには目を通していない。元々彼はどこか抜けている人物なのか、それとも映画の展開を考えるにあたって隙を作ってしまったのか。そこだけでも知りたいのだが、そのためだけに中途半端な巻からラヴクラフト全集を買うのも微妙だ。果たして彼は希代の天才か、または奇跡を起こした馬鹿か。しばらく悩みは尽きそうにない。#[死霊のしたたりシリーズ]

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原題:Bride of Re-Animator
96分

 ハーバート・ウェストとダンは戦地に赴き、治療をしつつ相変わらず実験を続けていた。そろそろ自分達の命も危ないというタイミングで帰国すると、彼らはまた同じようにいつもの場所でいつもの実験を再開する。今までは死体を蘇生するというテーマで活動していたウェストだが、死体を組み合わせて蘇生するというとんでもない実験まで行うようになり……。

 展開は前回同様で実験の成功と判断の過ちによる失敗を繰り返すもの。新鮮味は一切無いものの、彼らのおかしな行動はコミカルで笑える。基本的にはどの登場人物も目的を見失っているようで、どうしてそこでその行動を取ってしまうのかと思ってしまう。それにウエストはもう少し自分の性格を理解すべきだ。指の固まりにせよ詰めが甘い。

 序盤はおどろおどろしい気もするが終盤に向かうとコメディ色が強くなり、Happy Tree Friendsのような不条理でグロいギャグを見ている気分になる。実験がうまくいくのかどうかという観点では見ることができず、実験の失敗がどう繋がるのかという展開を期待してしまうのである。つい彼ばかり注目してしまうが、ダンもダンだ。

 前作のラストが出来心なのは分かる。今回も愛故の暴走だとは思う。しかし余りにも意思が弱い。全くストッパーになれていない。コミュニケーション能力に欠けるウェストの代わりに存在するだけの立場になっている。なんと地味なキャラクターだろうか。ERのジョン・カーターみたいな外見と性格だが、彼には根っこがない。薄っぺらいのだ。

 本作はサービスカットも控えめで、個人的には前作よりスプラッター要素が抑えられていたように感じた(配信でカットされているのかもしれないが)。デッドプール2同様に売りが弱くなっている印象を受けたのだ。ところがそんな内容でも2003年には続編が公開されている。今度こそはと期待して観てみたいが、現時点では配信タイトルに存在しない。いつか観る機会があれば気楽な気持ちで観てみたいものだ。#死霊のしたたりシリーズ

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原題:Day of the Dead
102分

 数少ない人類はゾンビだらけになってしまった世界で地下の施設に籠もって生きていた。生き残りの人類を捜したところで結果は奮わず、現れるのはゾンビばかり。疲れ切った状態でもまた別の仕事をさせられる上に失敗しては殺されかける。そんな極限状態ではまともな話し合いもできずに互いのストレスだけが増えていく。それでもローガン博士は意味があるのかもわからない研究を続け、サラは頭を抱えていた。

 唯一の女性で比較的まともなサラが振り回される描写が目立ち、ゾンビの脅威そのものは比較的抑えめなままストーリーは進む。とりあえず侵入さえ防いでいればなんとかなるゾンビよりも、互いに共同生活を営んでいる人間の方がよっぽど恐ろしいというのはなんとも皮肉な話だが、今の時代でもゾンビ物でそういう描写は多い。きっと人間こそがレジェンド級の化け物なのだろう。

 だが最初は敵ですらない印象を与えていたゾンビも、徐々にその優れた能力を発揮していく。博士の研究は狂っているようにも見えたが、その研究は実を結んでいたのだ。理性や自我を持たず、視界に入ったものを襲うだけと思われていたゾンビが徐々に学び、過去の記憶から行動する。それは信じられない結果であり、恐ろしく不気味なものでもあった。だからこそゾンビを、そんな研究を続ける博士までもを嫌悪する兵士が出てきてもおかしくないのだ。

 最初は思っていたよりもスプラッター要素が少なくて落胆していたが、ゾンビが暴れ出すとそんな気持ちもなくなった。生きたまま焼かれたり体を裂かれたりと血みどろのシーンには否が応でもテンションが上がる。もしこれが善人寄りの人物であれば嫌な気持ちにもなるのだが、酷い目に遭うのは酷い輩ばかりである。憎たらしい人物が苦しむ度についついゾンビの応援をしたくもなるというものだ。

 ただそんなやつらでも最低限の良心は残っているのか、もしくは兵士としての誇りかは分からないが、唯一の女性で顔立ちも整っているサラを襲わなかったという点については評価できる。それに個人的な好き嫌いで出てきた兵士を全員敵視していたが、とんでもなく酷い人物は一人しかいない。まあ彼がヘイトを集めすぎていた気はするが……ゾンビ三部作の中で一番好きなものはと聞かれたら、私は本作を挙げるだろう。

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124分

 現代と近いのか、それとも遙か遠い未来なのかも判別の付かない世界。世界中が発展と荒廃の渦に飲み込まれているサイバーパンク色の強い舞台で、少年らが暴れ回っていた。彼らはせいぜい名の知れた集団で終わるはずだったのだが、何者かの描いた筋書きによって大きな渦に巻き込まれ、その中心の渦そのものへと変化していく……。

 アニメ映画はあまり観る機会が無い。それでも少しは観ており、その中には『パプリカ』が含まれる。キャラクターや構成は当然違うものの、どうしても所々でそちらの方と比較してしまうのが難点であった。どちらも共通して言えるのは、明確な答えらしい答えはないというものだ。各々の解釈によってどうとでも捉えられる作品であり、これはこうだと断定するのは非常に難しい。

 更に言えば原画の田中達之がデザインを担当したゲームの『リンダキューブ』が好き(だが自分の手でクリアはしきれなかった)なせいか、リンダキューブの世界であった出来事のように思ってしまうという問題も発生した。アニメ自体には何の罪もない。ただ私が映画を観るまでに得た知識や記憶といったものが純粋に作品を楽しむ機会を奪っていたのである。

 内容はサイバーパンクや世紀末らしいものであり、鮮明な他人の夢を横から覗き見ているような印象が強い。よく分からない何かが起きて、それに右往左往しながら手に負えない大きなものと衝突する。ありがちといえばありがちで、王道といえば王道だろう。そこに精神世界であったり化け物であったりといった要素がうまく絡み合った映画だ。

 最後まで退屈せずに観ていられたのだから、面白かったのだとは思う。ただどこがどう面白かったのかと聞かれても困る。語彙が一切感じられない残念な表現で申し訳ないのだが、「なんか面白かった」としか言えないのである。ただ個人的にまた観たいかというと微妙だ。自分で設定を練るのが好きな人や、考察が好きな人には素晴らしい映画にもなり得るのかもしれない。

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説明

 洋画中心。最低でも週に一本はレビューするつもりで定期更新。※現在は創作や仕事に集中するため、ほぼ停止中。

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