No.146

原題:The Killing
85分

 独創的な映画ばかり作る印象のある監督といえばスタンリー・キューブリックだろう。そんな彼がハリウッドで最初に作ったのがこちらの作品である。内容は手っ取り早く大金を手にしたい連中が計画を練り、競馬場の金を狙うというもの。計画実行までの人間性が際立つドラマパートにスマートさの光る強盗パート。そして結末が待ち構える。

 計画自体はよくできているが、何故そこにその人物を選んだのかという疑問点は残る。ああいう性格だから利用しやすいと考えるべきか、あるいは他がまともだったから彼しかいなかったのか。何にせよ計画に欠かせない人物ではある。きっと他に誰もいなかったのだろう。ついでに他の疑問点もある。それはある人物らとの交渉シーンである。

 その計画には協力者が必要で、協力者には詳細を明かすわけにはいかない。もし彼らが手にする大金の額を知ってしまえば、多額の報酬を要求してくる可能性が高いのだ。それで協力者には詳細を隠し、彼らからすれば大金(強盗で得る額からすればはした金)を支払う。詳細は明かさない。その代わり協力すればこれだけの金をやるぞ、と。

 もちろん彼らは食いつく。しかし彼らも馬鹿ではない。何故この程度の協力で大金を得られるのだろうか、と疑問を抱くのだ。この程度の内容なら自分である必要はない。それにもっと安く済む。さてはもっと大金が手に入るのだろうと。そうと分かれば彼らも黙ってはいない。協力はする。その代わりに分け前をよこせ。これは当然の流れで、これまた当然の要求である。

 ここで私は口約束をして反故にするのか、過少申告して少ない分け前を与えるのか……と考えていた。しかし彼らはごねる割にあっさりと引き下がる。依頼内容を怪しむ者が居るのはいい。誰も疑わないのは不自然だろう。けれどもこうさっぱりしていると違和感がある。これならもういっそのことごねる展開は不要だったのではないだろうか。

 最後に疑問点を書いてしまったが、全編通して気になった箇所といえばそれくらいのものである。彼が仲間でなければ最後の展開には至らないわけで、いささか不自然ではあるものの協力者が納得しなければ計画もうまくいかないだろう。演出はキューブリック監督らしく、いやに人間らしい彼らのやりとりもうまい。フィルム・ノワールに興味があれば是非観てほしい。

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