カテゴリ「90分前後‏‎」に属する投稿(時系列順)[25件](2ページ目)

原題:El hoyo
94分

 男は目を覚ます。そこには無機質な部屋があり、中央には大きな穴が空いている。その穴は天井と床にあり、上下に存在する部屋にも同様の穴が続いていた。この穴は何だろう。どこまで続くのだろう。そんな疑問を浮かべていたが、奇妙な同居人ははっきりとした答えはくれない。同居人は上層から降りてきた食事を平らげながら男に尋ねる。食べないのか? と。

 謎しかないまま進むストーリーで、主人公のゴレンは警戒心が強く気難しそうな男だが同居人のトリマカシとも割とすんなり仲良くなる。ただそれは親しくなっただけで謎は全く解決していない。謎を明かす鍵も特にないまま進むおかげで、この先どんな展開を迎えるのか、何が目的の施設なのかと想像しながら期待以上に楽しめた。

 全く同じとまでは言わないが、個人的に昔考えた企画で似たようなものがあった。それはここまで階層が細かくはなく上中下のたった三層ではあったものの、一定期間ごとの投票形式で住む階層が入れ替わるというものだった。結局面白く描ききることができずに企画自体が無くなったのだが、こういう人間のいやらしさや本能といったものを描けばよかったのだと痛感させられた。

 しかし本作が完璧だったかと言えばそうではない。結局色々と投げっぱなしだった印象も強く、中にはそういう結末が好きだという者も居る。だが伏線やそれまでの出会いが繋がっていくのは非常に良かっただけに、どうしてもそれら全てをまとめ上げて幕を閉じて欲しかったのだ。限りなく名作に近い佳作。雰囲気は最高だった。

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原題:Land of the Dead
93分

 ロメロが随分と久しぶりに撮ったゾンビ映画。当然のように世界はゾンビで溢れているものの、生き残っている人間もそれなりに頑張っている。ある程度の戦力は確保しているのだが、残念なことに人間は油断してしまう生き物なのだ。うっかりピンチになっては死を招き入れるそんな世界で、チョロやライリーといった傭兵たちはそれぞれの目的を達成すべく、己の意思で突き進んでいく。
 構成としては割と単純で、ゾンビのいる世界でも未だに存在する人間社会のいざこざが物語に大きく絡んでくる。各々の力が弱ければ、ゾンビという共通の敵だけを相手にしたのかもしれない。ただそれでは物語の深みもなく、退屈なシーンばかりになるだろう。ゾンビが居ようと居まいと人間は人間で、自分勝手な生き物。ロメロは毎回そんなことを伝えてきている気がする。
 主役の一人であるジョン・レグイザモは『ER緊急救命室』のクレメンテ、サイモン・ベイカーはといえば『THE MENTALIST メンタリストの捜査ファイル』のジェーンと個人的に好きな海外ドラマで印象に残っているキャストだったのが印象的だ。といってもそれは本編とは何の関わりもなく、もし彼らのファンでゾンビ映画を普段観ない人なら楽しめるだろうという程度だ。
 ホラーやゾンビ映画としては十分満足出来るだろうし、ロメロっぽさも感じられる。だが新鮮味はそこまでなかった。よくある映画にロメロの味付けが加わった程度であり、彼のゾンビ映画を観たいというファン向けの作品に終わっていた。ロメロ作品にありがちな力で引き裂かれるシーンなんかは特にそうだと思う。
 映画としての面白さはある。様々な要素で楽しめるのも確かだ。だがもう一捻り何かが欲しかった。

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原題:Diary of the Dead
95分

 なんとなくロメロ強化週間という感覚で立て続けにロメロ作品ばかり観ているのだが、こちらはなんとドキュメンタリータッチ。『ブレア・ウィッチ・プロジェクト 』に『テイキング・オブ・デボラ・ローガン 』と私のレビューでは迷作ばかりの表現手法となっている。突如発生したゾンビと人間の愚かさ。毎度お馴染みのテーマがこれまでとは異なる描写で楽しめるようになっていた。

 カメラ越しに化け物と対峙する映画といえば『REC /レック』辺りが目立つだろうか。あちらはカメラを効果的に使っていて、続編では妙なことになってもいたがカメラとホラーの組み合わせとしてはよかった。本作はホラーとして楽しめるかどうかは正直微妙で、カメラ越しの映像作品やホラー作品といったカテゴリーで比較すると負けてしまっているように感じた。

 だがそこはロメロ。中弛みしやすいこのジャンルでもゾンビ映画らしさは健在であり、睡魔に襲われてしまう機会は少ない。どうして撮影を続けるのかという理由一つをとっても、彼らの行動原理にそれなりの設定が用意されている。それでいて映画を通して伝えたい核が定まっているおかげで、軸がぶれずに映像作品としてまとまっていた。

 ロメロはきっとこう言いたいのだろう。ゾンビなんかよりも人間の方がよっぽど化け物だと。伝えたいものだけ伝えたって駄目なんだと。真っ先にゾンビの異変を伝える存在が彼らなのは職業からしても自然で、いきなり犠牲になってしまう存在なのも彼らがそういう職種でそういう仕事をしていたからだ。ロメロは糞を捻り出した本人に糞を投げつけたに過ぎない。

 ストーリーは欠けているかもしれないが、このジャンルで妙にストーリーがあってもフィクション要素が強くなってしまう。監督のファンであろうとなかろうと好き嫌いが分かれる映画だろう。出来に不満を抱えて、監督の名前を間違えたまま連呼するレビュアーが現れるのも致し方ない。なにせ本作の題材は恐怖ではない。人間の醜さと愚かさだ。期待のベクトルが違うのである。

 カメラマンの報道精神が嫌いな人もいるだろう。主要キャラが死んでもそこまで感情移入できず、モブの一人が死んだ程度の感覚しか覚えない人もいるはずである。彼らは映画の主演ではあるが、事故現場でスマートフォンのカメラを向ける人々と何ら変わりないのだ。淡々と迎える世紀末を傍観する人類と、それを眺める視聴者。娯楽映画かは悩むところだが、嫌いじゃない映像作品だ。

1067文字 編集

原題:Survival of the Dead
90分

 『ダイアリー・オブ・ザ・デッド 』の続編らしいということでついでに視聴。続編といっても一部シーンで関わった人たちがその後どう行動したかといった内容で、別に本作から見始めても問題はない。続編というよりもサイドストーリーと言った方がいい気もするが、どんな流れで何が起きたのかという展開を知っておく意味では前作を観ておいた方がいいだろう。

 ロメロのゾンビ作品は三部作にしても続きだなんだとまとめていいのか悩んでしまうもので、本来であれば『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド 』から全てのゾンビ作品をシリーズとしてまとめた方がいいのだろう。しかしゾンビの発生した時期を考えると一緒くたにするのも何だか違うなと思ってしまうのだ。だから本作に関してもシリーズとしてはくくらない予定である。

 序盤がある程度お決まりなせいか、のっけからあらすじでもなんでもない文章を書き連ねてしまった。今度はモキュメンタリーではないが、ちょっとした人間同士の対立から始まる。島に住まう者と島を追い出される者の描写から強盗と化した元州兵たち。彼らはどうやってこの世界で生き抜くのか……という映画だと思ったら実はそうでもなかった。

 島を追い出されたパトリックと強盗団のブルーベイカーが主役で、その日を生き抜くという意味ではサバイバルもしているのだが、そこまで苦労している描写もないせいで武器を振り回して自由に生きているように見える。トントン拍子でストーリーも進むため、手軽で画一的なインスタントラーメンのような映画になっていた。

 ラーメンを食べたいという欲求は満たせる。作るのだって簡単で苦労しない。ただお湯を注ぐだけのカップ麺よりは鍋で作るラーメン、もっといえば専門店でじっくり作り込まれたラーメンを食べたい……と考えるのが腹を空かせた客というものではなかろうか。果たしてこの映画はそこまでの味があったのか。まあ微妙なラインだろう。

 終盤のサプライズにしたって、ロメロのファンであれば「まるであのシーンじゃないか!」と思うかもしれない。だがそうでなければそこまでの驚きもないだろう。それどころか「焼き直しじゃねえか!」とネタの使い回しを批難する可能性だってある。確かにゾンビ映画ではあるが、どうせ観るなら『死霊のえじき 』でも観た方がいいかもしれない。

1013文字 編集

原題:Shattered Glass
94分

 若くして売れっ子記者として活躍するスティーブン・グラスは、堅苦しくなりがちな雑誌で面白い記事を量産していた。誰もが尊敬し、編集長や同僚までも彼の記事を期待するほどだったのだが、ある記事がきっかけとなり彼の記事は創作ではないかと疑われてしまう。スティーブンは関係者の情報を渡し、身の潔白を証明するのだが……。

 本作は実際に捏造記事を特大ニュースかのように書いては評価を得ていた記者、スティーブン・グラスを映画化したものである。正直な話、彼は最初から最後まで怪しい人物だ。本人は上手く振る舞っているつもりなのかもしれないが、あまりにも雑で考えなしの阿呆としか言えない。同僚たちはなぜ一度も疑わなかったのだろうか。

 大スクープをどこからともなく入手する天才記者の割にどうも薄っぺらく、そんな人物を無条件に信用する彼らは果たして被害者だろうか。記事を裏付ける調査すらも怠り、たった一人の文章を全面的に信用してしまうというのは職務放棄に他ならない。正しい記事を届けるのが記者の仕事だとすれば、彼らも共犯者といえよう。

 これといった捻りもなく、詰めの甘い嘘吐きが大きな嘘を吐いて失脚するだけの映画になっていた。頼りない新編集長が誰よりも真面目で熱意もあった点については意外性もあったが、それだけである。邦題を見て思う。彼は天才か? むしろ馬鹿ではないか? もっと大胆で知的な内容を想像していたせいか、非常にがっかりした。

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 洋画中心。最低でも週に一本はレビューするつもりで定期更新。※現在は創作や仕事に集中するため、ほぼ停止中。

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