カテゴリ「120分前後」に属する投稿(時系列順)[18件]

原題:San Andreas
114分

 恐ろしく優秀なレスキュー隊員の主人公が活躍する映画。家族が大災害に巻き込まれてしまい、救う為に次々と乗り物を強奪しながら何とかするという内容で、災害の恐怖と強い主人公の王道ストーリーが待っている。主人公が抱えていたトラウマを克服するシーンもあり、ただのパニック映画では終わらないデキだった。

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原題: The Birds
119分

 襲いかかる鳥の恐怖に怯え、逃げ惑う姿を描いたパニック映画。メイン寄りの人物には鳥が苛立つ(仲間を食べていたり雑に扱われたり等)理由もあるが、襲う理由が明確には明かされていない。ただ、理由もなく襲いかかる方がより恐怖を感じる。ホラーとしてはそれでいい。人の弱さと動物の強さ。身近で起こりえるかもしれない恐怖は背筋を冷たくさせる。

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114分

 ちょっとした切り傷や擦り傷程度であれば、大抵の人は軽く水洗いをして放置することも多い。しかし運が悪いと細菌に感染してしまう場合もある。身近にあって死亡率も高い破傷風。この感染症の恐怖を教えてくれるのがこの作品だ。映画を通して観れば、確かに恐ろしさも人間の弱さも描かれている。ところがホラー要素を重視しすぎたのか、色々と理不尽な(あるいはご都合主義とでもいうか)描写も見受けられる。ストレスによるパニックを表現するための発狂は問題ないが、破傷風の患者をあの病室に入れるのは意味が分からない。誰も破傷風について詳しくないという想定で撮られていれば、そういう時代だったのかもしれないとは理解できる。けれども作中で音と光に対する影響が語られている以上、納得できる者は居やしないだろう。驚くような展開はなく、先述した通りで粗もある。それでも視聴者を引き込む力はあり、機会があれば観て欲しい一本だ。

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原題:Awakenings
121分

 いつも通りの日常が永遠に続くとは限らない。ふとした拍子に環境が変わることもあれば、自分自身が変化してしまうこともある。本作に登場するのは、病気によって日常が失われた患者と医者達だ。主人公はこれまで研究に没頭していた医者だったが、臨床医として勤務することになる。戸惑いながらも患者を診ている内に、研究熱心な性格からか特定の患者に共通した反応があることに気付く。様々な方法を実践し、実際に効果も出始める……。舞台やテーマからすれば退屈な展開が続きそうなものだが、主人公の静かな変化と患者の劇的な変化で飽きずに鑑賞できる。切らない(血の出ない)医療物を探している方がいれば、この作品をおすすめしたい。

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原題:Looper
119分

 あらすじ(この場合は内容の全体像ではなく、冒頭に触れるものとして扱う)というものは重要である。それがどんな作品なのかを判断する大切なポイントで、あらすじの時点で気にならない作品を手に取る者は居ないだろう。この作品を見ようと思ったキッカケは間違いなくあらすじだが、どうもあらすじの表現が過剰演出だったように感じる。それだけ私は落胆したのだ。

 未来にはタイムマシンがある。犯罪組織はタイムマシンを悪用して、標的を過去に送り込んでルーパーという暗殺者たちに殺させる。ルーパーには任期のようなものがあり、最後は自分で未来の自分を殺さなくてはならない。主人公であるジョーにも未来の自分を殺す日が訪れてしまい、殺し損ねてしまう……という一連の流れが物語の動き出すターニングポイントである。

 短くまとめてしまえば、ついに自分を殺す日が来たけど動揺して逃しちゃった。うむ、なんて情けない説明だろうか。確かにあらすじで表現を盛りたがる気持ちもわかる。しかしそのあらすじで私は、「これは近未来を舞台にしたサスペンス・アクションか?」と思ってしまった。ところが蓋を開けてみればサスペンス要素はかけらもなかった。

 映画自体は分かりやすく適度に面白いとは思う。ただ色々と気になる点もある。タイムマシンを悪用するにしても、わざわざ本人を送り込んで過去の暗殺者に始末させ、わざわざ大金を払うのはどうなのか。幼い本人を直接その時代で殺すよりはいいとはいえ……なにか他に良い方法はないのか。他にもっと便利な道具は出来ていないのか? 暗殺が雑じゃないか?

 ハードSFを好むガチガチのSFファンがターゲットではないのだろうが、軽いSFにしたってもう少し説得力や科学っぽさを見せて欲しかった気はする。深く考えず、ちょっと変わったアクション映画として見ればある程度は楽しめるだろう。決してタイムマシンやSFといった言葉、あらすじに期待しすぎてはいけない。B級映画と思って楽しもう。

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原題:Jungle
115分

 人は未知の存在に恐怖する。しかし同時に興味も抱いてしまう。好奇心とは常に未知というスパイスを孕んでいるものなのである。主人公のヨッシー・ギンズバーグは現地で知り合った友人2人にガイドの1人を加えた4人でジャングルの奥地へと進む。だが、ジャングルには彼の想像を遥かに上回る危険と恐怖が潜んでいた……。

 魔法を使っている子役のイメージがしばらく付き纏っていたダニエル・ラドクリフがジャングルを舞台に生きる。最初は顔を見る度に妙なイメージがちらついていたものだが、物語が進むにつれて彼はヨッシーにしか見えなくなっていく。こう書くとそれはそれでまた違った意味に受け取られかねないが、心配は杞憂に終わったのだ。

 主な登場人物は4人と少ない上に、終盤はほぼ1人で演出や演技が重要になる展開が続く。このような内容だと俳優によっては間が持たず、演出によっては退屈な時間にもなりやすい。けれどもダニエルの演技は見る者を引き込み、極限状態の人間が見てしまうものを表現することで観客を飽きさせず、より作品の魅力を引き出している。

 作品としては面白く、実話が基になっているとは思えないほど単体の映画として昇華されている。個人的にはおすすめしたいところだが、割とスプラッターな要素もある。未開の部族と『グリーン・インフェルノ』のような展開はないが、動物が悲惨な目に遭うのは間違いない。そういったものへの耐性があり、サバイバルが好きな人には見てほしい。

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原題:내가 살인범이다
119分

 チェ・ヒョングは連続殺人犯の事件を捜査していたが、危うく殺人犯に殺されかける。しかし命までは奪われずに、その恐ろしさと強かさを宣伝する広告塔として生かされることとなる。それから17年の月日が流れ、ある日真犯人を名乗る男がメディアに姿を現して事件内容を赤裸々に描いた本を出版するという。当然ヒョングは画面に映る男を睨み付けるが既に事件は時効を迎えており、彼を逮捕することは不可能だった……。

 チョン・ジェヨンが演じる野性的でワイルドな刑事のヒョングと、パク・シフのクールで謎めいた姿が対照的な殺人犯のイ・ドゥソク。2人のやりとりが主軸であり、どちらかの性格や外見が合わなければ恐らく映画自体もいまいち楽しめないだろう。個人的には本作のジェヨンが昔働いていた会社の社長にそっくりで、「社長すげえ!」「社長強い!」と変な感覚を抱きながら観ていた。そういえばあの社長も酒浸りだったなあ。

 ちなみにこの映画、韓国で実際にあった未解決事件からインスピレーションを得ている。その事件を題材にした他の映画としては『殺人の追憶』というものがあり、こちらも気になってはいるが観ていない。他にも本作をリメイクした邦画に『22年目の告白 -私が殺人犯です-』もある。評判は悪くないが、リメイクということでどちらかを見たらどちらかを純粋に楽しめなくなる。残念ながら邦画は観ないまま終わるだろう。

 それでは感想に戻ろう。はっきり言うと最初は単なる刑事の復讐劇と思っていた。しかしそれぞれの思惑やストーリーが絡み合って深みのある展開が待っており、想像以上に丁寧な脚本を楽しめた。随所に入るアクションもそれなりに見応えがあり、コメディ要素は良くも悪くも印象的だった。『コンジアム 』でつのった不信感を払拭するだけの力はある。それに『新感染 ファイナル・エクスプレス』よりは人に勧めやすい。

 余談だが社長に似ているという私の感想は共感を得られないだろうが、真犯人を名乗る人物の姿がお笑い芸人の誰かさんに似ているという感想は共感を得るかもしれない。途中まではぎりぎり別人に見えていたのだが、生物としての気持ち悪さが強く出始めると髪型と表情が気になり始め、私もラッセンが好きだと余計なことを口走りそうになった。癖の強い女学生もタンポポを思い出してしまい、妙な気持ちになる。

 アジア映画だから日本人の誰かに似ているという感想を抱いてしまうのが欠点ではあるが、映画そのものは純粋にエンタメとして、サスペンスとしてもしっかり楽しめる。思いのほかアクションが多く、引きでピンボケ気味に写せばいいものをしっかり写すせいで違和感の目立つ3DCGも気になるが、そこはもう目を瞑るしかない。どんな駆け引きを経てどう結末を迎えるのか。その一点に集中しよう。

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原題:Deadpool 2
120分

 最愛の恋人と再会したウェイドは幸せな毎日を送っていた。しかし恋人のヴァネッサが殺されてしまい、自暴自棄になってしまう。しかし超人になってしまったせいで自殺を図るも死にきれず、コロッサスからはしつこく勧誘を受ける。X-MENに見習いとして参加した最初の任務ではミュータント孤児のラッセルと出会う。ラッセルのためにデッドプールとして好き勝手な振る舞いをしてしまうのだが……。

 幸せを掴んだかと思いきや不幸な世界へと転がり落ちてしまったデッドプールはどこか覇気が無く、前作と比べたら勢いがなかった。その代わりに運の良さと意外にも高い身体能力が目立つドミノが活躍していたように思う。前作の暴走ぶりが10だとすれば、本作はせいぜい6といったところだろう。終盤では暴走ぶりも見られるものの、そこまでの控えめな面が長く印象に強い。物足りないというやつだ。

 アクションはあって随所の演出もそれらしい。本人が言っていたようにファミリー向けの映画といったらいいのか、せっかく良い豆を使って苦く香り高い珈琲を淹れた後で安いミルクをどばどばと投入したようなものになっていた。それはそれで美味しいのかもしれないが、珈琲とカフェオレは別物の飲み物だ。きっとこのデッドプールを求めている者も居るのだろう。だがイレギュラーな存在を求めていた私は落胆した。

 ここまで文句ばかり並べ立ててしまったが、本作も個人的には好んでいる。アクションが見たい。スプラッターも見たい。ついでにジョークや下ネタもあれば娯楽としては良い。そんな私の欲求を詰め込んであった。ところが残念なことにその引き出しは鍵が掛かっていた。いや、奥で何かが突っかかっていただけという可能性も考えられる。とにかく良い題材は眠っていたが、引き出しきれずに仕舞われてしまった。惜しい作品である。#マーベルシリーズ #デッドプールシリーズ

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原題:Split
117分

 運悪く誘拐されてしまった女子高生3人は仲良く閉じ込められてしまう。リーダー格のクレアは根拠の薄い自信でなんとかしようと考え、腰巾着のマルシアはその意見に乗っかる。しかしケーシーは乗らず、悲観的で現実的な案を出そうと頭を働かせる。けれども解決策は浮かばずに鍵穴から部屋の外を覗いていると、そこには誘拐犯とは違う服装と声色の誰かが現れた。当然彼女らは助けを求めるのだが、扉を開けて姿を見せたのは女装して別人を演じる誘拐犯の姿だったのだ。

 物語が誘拐から始まれば、もちろん多くは誘拐の解決を求める。誰がどうやって誘拐犯の足取りを掴み、彼女達を救うのか。そんな視点で物語を楽しむものだろう。ところが本作にはそういった要素はほぼ無い。誘拐はきっかけにすぎず、この物語の本質ではないのだ。だから警察や特殊部隊が活躍する様もなく、誘拐犯と女子高生――ケーシーのやり取りが肝となる。アクションではなく、人間心理を楽しむのが正解だろう。

 この誘拐犯は解離性同一性障害(多重人格といった方が馴染みがあり、理解もしやすいだろうか)であり、作中でも語られるが解離した人格にはそれぞれ異なる特性を持っている。それは単なる性格や口調のみならず、時にはその者の構造そのものも変えてしまう。極端な話をすればパン屑が付いた服を見るだけで嫌悪する潔癖症な人間にも、散弾銃で撃たれても効かないような人間にもなれるのだ。

 本作は割と前に公開された『アンブレイカブル』の流れを組んでいるとのことで、個人的にはかなり期待していた。しかし全体の流れは良かったものの、オチの弱さがどうも気になってしまった。こちらからまた続いている『ミスター・ガラス』も観てみたいのだが、果たして期待していてもいいのだろうか。M・ナイト・シャマラン監督は当たり外れの差が激しい気がしているのだ。だが、それでも次を期待してしまう。不思議だ。

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原題:Spy
120分

 どこか抜けているが一流のスパイであるファイン。彼をオフィスからサポートするのがスーザンの仕事だった。幾つかの不満も抱えたまま仕事をそれなりにこなしていた彼女だったが、ある日ファインが射殺されてしまう。彼女は内勤という立場でありながらも自ら志願して現場へと出向き、ファインを射殺したレイナへと接近する……。

 スパイではない人物がスパイとして活躍するコメディといえば、小説家がスパイになってしまう『なりすましアサシン 』を思い出す。しかし実はこちらの方が公開は古い。それにあちらはコメディを重視しているが、こちらは意外にもスパイ映画としても練り込まれている。それにスーザンは仮にもスパイ。体型で誤解されがちだが身体能力も高く、ただ現場に出ていないだけの一流スパイとも言えるだろう。

 登場人物の大半がコメディのノリで、真面目な人物は敵の組織やモブくらいなものだが、残念なことにシリアスな振る舞いを見せる人物は死にやすい。彼らは本作においてはハードル走のハードルでしかないのだ。立ち塞がって邪魔をするが、あっさりと跳び越えられる。ハードルに引っかかってもすぐに立ち上がり、次へと進む。敵は観客を楽しませる要素の一つに過ぎず、スリルなんてものとは無縁である。

 本作を本格的なスパイ映画として紹介するわけにはいかないが、面白いスパイ映画としてなら紹介してもいいだろう。主役ではないがジュード・ロウとジェイソン・ステイサムは頼れるスパイの姿を見せてくれる。スーザンを演じるメリッサ・マッカーシーだってそうだ。その見た目からは想像できない動きで敵を倒してみせる。娯楽としてスパイ映画を探している人がいれば、是非こちらの映画をオススメしたい。

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原題:El laberinto del fauno
119分

 軍人に囲まれてどこかへ向かう少女と身重の母。そんな状態で荒れた道を進んだせいだろう。母は気分を悪くして車を止めさせる。少女――オフェリアは車中で夢見がちな本を母から馬鹿にされたこともあり、車を降りた後も不満げに辺りを見回していた。そこで足元にあるものに気付き、それをある場所へと戻した。すると妙に大きく存在感のある虫が現れ、オフェリアは驚く。しかしその場では特に何も起こらず、再び車へと戻り目的地へと向かうのであった……。

 正直に話すと私はファンタジーをあまり観ない。別に嫌いではないのだが、他に観たい映画があればそちらを優先してしまうのだ。それというのもどちらかといえば本作の母親に近く、あらゆるものを空想よりも現実を重視して判断してしまうせいである。ゲームだと気にせず買うが、映画は2時間程度の時間に全力を注いだ究極の作り物だと考えており、ファンタジー映画は作り物の中の作り物という感情を抱いてしまうのである。

 ただの偏見には違いないが、そんな私でもふとファンタジーに興味を抱く瞬間はある。美しい映像や魅力的なキャラクター。そして凄惨な表現。本作にはその要素が全て含まれていた。3DCGがお粗末(時代を考えれば仕方ないのかもしれないが)なのは気になるが、全体的に好みではあった。ただ、それでも名作とは言えなかった。オフェリアの扱いがどうもご都合主義というか、演出にしても説明不足な印象を受けたからだ。

 彼女の気力や豪胆な性格は場面によって変わっているように見える上に、ピンチを招いてもよく分からないチャンスを与えられる。作中屈指の悪人についてもそうだ。彼は警戒心があるのかないのか。短いシーンで変化に気付き、何も怪しまずに手を伸ばす。よくそれまで生きながらえてきたものだと感心する。尊敬はできないが。

 内戦だのダーク・ファンタジーだのと作風やテーマ、表現のせいで単なるファンタジー好きにはオススメできないが、普段から血にまみれた作品を観ている層にはオススメできる。その傷で断面も生々しいのになんで血が止まってんだ、針くらいで急にガーゼを染めるほどに出血するのは何故だ! と突っ込みたくなるシーンもあるが、十分面白い映画だった。細かいことは考えず、映像に酔いしれよう。

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原題:범죄도시
121分

 韓国には元々韓国系ヤクザと警察が程々の距離感を持って存在していた。大きな事件を起こそうものなら遠慮無く逮捕もするが、些細な事件(街中で刃物を振り回したり暴行事件を起こしたり)程度ならそこまでには至らない。しかしそこに中国からのマフィアが加わり、均衡を保っていた都市が血に染まっていく。しかし警察も黙ってはいられない。恐ろしく強いマ・ソクトが頭も力もフルに活用しながら前線に立って意地を見せるのだった。

 韓国映画の強いオッサンといえばもうお馴染みのマ・ドンソクが主演。それだけでも個人的には興味をそそられるが、更にクライム映画ということで期待値はピークに。悪役の見た目がとあるYouTuberに似ているのが気になったものの、パラメータを悪に振ったらこんな感じだろうなという納得もあり、途中からはそこまで意識しなくなっていた。とはいえ見た目が似ているという印象は変わらず、ふとした拍子で現実に戻ってしまっていた。

 ヤクザとマフィアの抗争にちょこちょこ首を挟む警察といったシーンばかりで、警察側の派手なアクションシーンは思いのほか少ない。それでも重要な場面では圧倒的なパワーで悪役を懲らしめるのだから一定の満足感は得られる。しかし知能犯は一切出て来ないせいか、意外な展開というものを楽しむ余地は少ない。騒ぎが起きてからそこに出向き、アクションが始まる。ほぼ全てのシーンがそれで説明が付くのはワンパターンとも言える。

 ただ元々そんな映画になりそうな気がしていたのか、それとも最初からそうしたかったのかは分からないが、本作には所々で観客を笑わせようとするシーンが含まれている。個人的には黙々とラーメンを食べるシーンがシュールで良かったが、硬派な映画を期待していたらがっかりするかもしれない。犯罪メインというよりはアクションに犯罪が付いたような作品で、とりあえず強い主人公が見たいって人にはおすすめの映画だろう。

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125分

 家族で引っ越し先へと向かう車の中で、千尋は不満げな表情を浮かべていた。人生で初めて貰った花束。それはとても嬉しかったのだが、引っ越しでお別れになってしまうからという理由で貰ったことが不満だったのだ。引っ越したくもなかったのに引っ越す羽目にもなれば、不満を抱えてしまうのも仕方ない。それでいて両親はやけに好奇心旺盛で、ふと目に入った古い建築物に興味を示してしまう。まさかそれが冒険の始まりになるとも知らずに……。

 これまた少し前にあった、大勢の人が観ている割に観ていなかった映画。様々なメディアで何度も目にしている人も多いだろうが、それでもネタバレに配慮したレビューをする。ついでに評価も先に書いておこう。名作だ。好き嫌いはあるだろうが、これを駄作だの迷作だのという人はそう居ないと思う。日本人による日本を舞台にした日本らしいファンタジー。少女の成長と冒険も描かれており、よくできたアニメである。

 作中の登場人物で常識度ランキングのようなものを実施すれば、千尋の両親はきっと下の方に居るだろう。二人はなかなかにクレイジーで自由だ。よくこんな両親から千尋のような子が育ったものだと驚く。といっても千尋がまともかといえば少し疑問も残る。一言で言えば両親は食欲旺盛な豚だ。食材に大人を刺激する香りや味が含まれていたのかもしれないが、それでもまともな大人は無許可で料理に手を出さない。

 そんな両親の食欲だけは継いでしまったのか、千尋も得体の知れないものを食べようとする辺り片鱗がある。よく分からないものを手にして、それはきっとなんだかよく分からないけど良いものだと思える頭も凄まじい。だが千尋は子供である。大人ほど経験もなく、直感を重視してしまうことだってあるだろう。その点を踏まえても団子を喰らい、喰らわせるというパワープレイは両親に負けないクレイジーっぷりだ。

 そして本編はもちろん、サイドストーリーも魅力的だ。素人童貞が初めての風俗で嬢に優しくされて、貢ごうとする。しかしなかなか喜んでもらえずどうしたものかと悩む。ついには他の従業員に当たり散らして嬢にまで怒りをぶつける。しかし嬢は偽りの優しさをみせずに心から向き合う。その結果、素人童貞はオタクには優しいギャルから必要とされて、自分の生き甲斐を見つける。実にいい話だ。これは単なる比喩だが、大体は合っている。

 最後の最後で酷い比喩を書いてしまったが、終始楽しむことが出来た。なんとなく『いのちの名前』はいつどこで流れるんだろうと思っていたら最後まで流れなかったのが残念だが、元々歌詞はないもので作品を彩るテーマソングとのことで納得した。個人的には『いつも何度でも』よりも好きなだけに勿体ないと思いもしたが、随所でこちらが流れても違和感が強そうだ。今さらだが、観ていない人には是非観て欲しい作品である。

1201文字 編集

原題:Falling Down
118分

 その日はとても暑い日だった。立ち尽くしているだけで汗が纏わり付いてきそうな蒸し暑さの中、ある男は苛立ちに耐えきれず自動車を降りた。自動車は停車していたが、そこは渋滞の道路。後続で待つ運転手からしたらたまらない。自動車を乗り捨てた男は我関せずといった様子でその場を去り、公衆電話を使う。しかし小銭が尽きてしまい、近くにあった商店で両替を頼む。だが断られてしまい、何かを買えと文句を言われる。それがきっかけとなり、男は怒りを抑えきれずに本能の赴くままに暴走していくのであった……。

 夏は年々蒸し暑くなり、様々な要因が重なって失業者も増えている現代社会を過剰に描いたような本作。主人公のフォスターは短気で暴力的な面のある中年男性だが、言ってしまえばそれだけでしかない。ただのオッサンがぶち切れて暴れ回った結果、とんでもない事件に発展させてしまったに過ぎない。色々と偶然が絡み合ったせいで暴走をエスカレートしてしまったわけで、元を辿れば店員がコーラを安く売ればよかっただけなのである。

 両替に応じるか、コーラを安く売る。たったそれだけのことでバットを振り回す男も拳銃を持ち歩く男も現れずに済んだ。オッサンが家に帰る。その途中で幾つかのトラブルに巻き込まれる。それだけのストーリーなのだが、これが不思議と飽きない。フォスターの怒りに共感してしまうからか、はたまた彼のわらしべ長者ぶりがわくわくするのか。映画とは監督と演出次第でどうとでもなるものなのだと実感させられる作品だ。

 主人公をどう思うかで映画の評価も大きく変わる内容なのは間違いなく、怒りっぽい中年男性の姿をひたすら見ているのは辛いという人もいるだろう。だが安心して欲しい。バーバラ・ハーシーにレイチェル・ティコティンといった美人が画面を賑わせてくれる。ディディ・ファイファーもチャーミングでいいが、彼女の出番はとても短い。暴走するオッサンと美しい女優を見たいと思っている方々を満足させるだけの魅力はある一本だろう。

872文字 編集

原題:Joker
122分

 アーサーはコメディアンになるという夢を持ち、ピエロの仕事をしていた。しかし若者に襲われてしまい、宣伝用の看板を壊されてしまう。看板を返すようにと上司から言われて説明をしても信用してもらえず、今度は別件でやらかしてしまったせいで仕事を失ってしまった。失うものがなくなったアーサーは再び別の連中から襲われた結果、我を忘れて拳銃を取り出し……。

 『バットマン』シリーズの人気ヴィランであるジョーカーの過去を描いたストーリー……というテイストではあるが、これまでの世界観や設定とは特に関係ない作品。こういう人がこんな扱いを受けたらいつかジョーカーになるんだ、と思いながら観る全くの別物なのである。つまり名前だけ借りた一つの独立作品と考えていいだろう。

 監督はトッド・フィリップスで、『ハングオーバー!シリーズ 』の監督でもある。ひたすらふざけた映画を撮る人かと思いきや、社会的な要素や政治的要素、残酷な描写(これはハングオーバー!でもあったが)もしてしまう多彩な監督だった。ただ本作を観た後だと、じゃああの続編の類いももうちょっと面白くできたんじゃないかと思ってしまう。

 辛い生活に加えて現実と見紛う妄想癖まであり、作中でもどこからが妄想なのか判別が難しく、極端な話をすれば何もかもが妄想なんじゃないかとも考えられる。最初の出来事からしてなかなか捕まらないのが不思議で、あの肉体にしては強すぎると思う場面もあったが、カリギュラ効果がすこぶる元気な映画で意外性こそが本領のような作品でもあった。

 彼は弱者でなければならず、弱者が強者に立ち向かうために最低限の強さと武器が必要になる。それがアーサーなのだろう。日本ではなかなかどうしようもない状況を外的要因で変える異世界転生モノがそこかしこに蔓延っているが、この映画が流行るということはベースをそのままにハリウッドで作り直せば大抵ヒットするんじゃなかろうか。

 小さい突っ込みどころはあるものの、王道で安定した面白い映画だった。

864文字 編集

原題:Ocean's Twelve
125分

 うまく大金を手にしたオーシャンズ一行ではあったが、何年も経ってからあの時の犯行が彼らによるものだと判明してしまう。盗まれた金は保険でカバーされているにも関わらず、オーナーのベネディクトは盗んだ金と利子を期限内に払えと迫ってきたのだ。しかし大金が残っているはずもなく、再び彼らは組んでこそこそと金を稼ぐ羽目になるのであった。

 前回に比べると泥棒の規模は小さくなっており、大掛かりな作戦もない。雰囲気もよりコメディ感が強まっている上にメタフィクションや大物ゲストの存在もあり、ファンを楽しませるための続編といった印象が強い内容となっている。それ自体はいいのだが、コメディに舵を切ったせいか個々のプロフェッショナル要素が減り、小者集団のようでもあった。

 これぞ金をかけた娯楽映画といった作りなのだが、海外ドラマでシーズン中盤辺りの話を見ている感覚が強く、一体いつになったらその凄い腕を発揮してくれるんだ? と焦らされるのも事実。やっと動き出したかと思えば再び物語は停滞し、ようやく大きな展開を見せるかと思えばあっさりと終わり、実はこんなことをしていましたと事後報告。がっかりである。

 序盤から中盤にかけてのちょっとしたやりとりも、それぞれのキャラクターを楽しむという目的で見れば価値もある。だがこれは犯罪者集団が凄いことをやらかす映画だと思っていたのだ。その大犯罪がダイジェスト形式ではいくらか不満も残る。ファンには良くて、まあ面白い。しかし物足りなさが後に残る。続編を見たくもなるがその程度。あまりオススメはできない。#オーシャンズシリーズ

709文字 編集

原題:Ocean's Thirteen
122分

 彼らはそれぞれの生活を送っていたのだが、彼らにとって大切なある人物が騙されてしまう。そのせいでその人物は立場を失い、心身も害してしまった。ホテル王のバンクへの報復を誓い、再びオーシャンズが集結する。確固たる地位を確立したバンクを失墜させてついでに巨額な報酬もゲットすべく、オーシャンズは大掛かりな準備を開始するのであった。

 初代は私怨が大きな目的で、続編はゆすられて仕方なく。そして本作では仲間のためにオーシャンズが活躍する。内容としては初代に近く、一つの大きな計画が描かれる。やはりちまちまとした犯罪よりはこちらの方が見応えもあり、盛り上がる。集大成といった作りで良かったものの、これで終わりかと思うと寂しくもあった。

 オーシャンズらしさは十分あり、登場人物の細かい繋がりなんかに興味がなければ11から13を観れば良い気もする。しかしこの二つを観てから12を観るのもそれはそれで微妙なので、多少合わなくとも順番に観ていった方がいいだろう。物足りないだけで全く面白くないわけではなく、それなりに楽しめるのは間違いないのだから。

 ただ本作は様々な人物が出てきた割に前作のキャストが欠けており、あの人たちはどうなったの? 今は何をしてるの? と思いもする。その辺りは打ち切り漫画のようでどうにかして欲しかった。けれども彼らは有名人なわけで、ちょい役で出して高額なギャラを持って行かれるのも困る。それではその人たちの方がオーシャンズ以上の泥棒になってしまうのだ。

 色々とやらかしながらもうまくいくというストーリーはもはや王道を通り越してテンプレではあるが、キャラクターが立っていたり成長が見られたりと様々な目線から楽しめる。といっても初代の焼き増しという印象は拭い去れず、名作にまではなりきれない。だがもしシリーズではなく一本の映画であれば、その時は名作と呼ばれていたのかもしれない。#オーシャンズシリーズ

845文字 編集

124分

 現代と近いのか、それとも遙か遠い未来なのかも判別の付かない世界。世界中が発展と荒廃の渦に飲み込まれているサイバーパンク色の強い舞台で、少年らが暴れ回っていた。彼らはせいぜい名の知れた集団で終わるはずだったのだが、何者かの描いた筋書きによって大きな渦に巻き込まれ、その中心の渦そのものへと変化していく……。

 アニメ映画はあまり観る機会が無い。それでも少しは観ており、その中には『パプリカ』が含まれる。キャラクターや構成は当然違うものの、どうしても所々でそちらの方と比較してしまうのが難点であった。どちらも共通して言えるのは、明確な答えらしい答えはないというものだ。各々の解釈によってどうとでも捉えられる作品であり、これはこうだと断定するのは非常に難しい。

 更に言えば原画の田中達之がデザインを担当したゲームの『リンダキューブ』が好き(だが自分の手でクリアはしきれなかった)なせいか、リンダキューブの世界であった出来事のように思ってしまうという問題も発生した。アニメ自体には何の罪もない。ただ私が映画を観るまでに得た知識や記憶といったものが純粋に作品を楽しむ機会を奪っていたのである。

 内容はサイバーパンクや世紀末らしいものであり、鮮明な他人の夢を横から覗き見ているような印象が強い。よく分からない何かが起きて、それに右往左往しながら手に負えない大きなものと衝突する。ありがちといえばありがちで、王道といえば王道だろう。そこに精神世界であったり化け物であったりといった要素がうまく絡み合った映画だ。

 最後まで退屈せずに観ていられたのだから、面白かったのだとは思う。ただどこがどう面白かったのかと聞かれても困る。語彙が一切感じられない残念な表現で申し訳ないのだが、「なんか面白かった」としか言えないのである。ただ個人的にまた観たいかというと微妙だ。自分で設定を練るのが好きな人や、考察が好きな人には素晴らしい映画にもなり得るのかもしれない。

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説明

 洋画中心。最低でも週に一本はレビューするつもりで定期更新。※現在は創作や仕事に集中するため、ほぼ停止中。

 レビューを書き始める前に観た映画の一部リストはこちら。好みの参考にどうぞ。趣味が合う人は名作を、趣味が合わない人は迷作をチェックすると好きな映画が見つかるかもしれません。

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